研究課題
2014年度は年度中途からの採用となったため,ポスドク採用ができず,研究体制の構築,研究設備の整備等を中心に行った.また研究集会を行ない,試料の取り扱い,配分(フロー)などについて確認を行った.まず始新世のNADWの移動経路候補地として想定される大西洋の南部のニューファウンドランド沖のIODP EXP342試料と,ODP Leg 208試料から作業に入る旨を決定した.Leg 208の試料を用いたCASの抽出を行い,そのCaCO3中の含有率を把握することができ,おおむね4gの堆積物試料から数回のCAS硫黄同位体比分析ができることが分かった.従来,炭酸塩堆積物中のCAS含有率については有用なデータがなかったが,この成果により,今後処理すべき試料の量,さらにはIODP/ODP試料のリクエストを行う際の要求量などを把握することができたので,今後の研究展開に際して不可欠な成果が得られたと判断している.また硫黄同位体比分析は,予察的な標準試料を用いた分析を繰り返し,標準試料の測定頻度を上げたり,同じ試料を複数回測定し,メモリー効果を除去するなど工夫を施したが,装置の安定性に問題があり,分析精度が±0.4‰程度から向上しなかった.一方,この精度であれば安定して結果を出せることもわかった.この精度は本研究の目指す議論(>1‰の変動を議論する)を考えれば十分であると判断した.代表者,分担者は個別に本研究に関連する成果を公表しており,それらは以下のリストにあるとおりである.
3: やや遅れている
追加採択であったため,当初年度より博士研究員を採用することができなかったこと,および27年度に研究設備の故障が多発したことなどが原因で,予定通り硫黄同位体比分析ができなかった.
27年度に装置の故障が多発したこと,装置の安定性に問題があったことなどから,硫黄同位体比分析システムのコントロール部分を総入れ替えを行った結果,非常に装置が安定し,標準試料の繰り返し測定では±0.1‰以下の精度まで向上させることができた.これは多くの国際論文で採用されているデータよりも高い精度である.また米国カリフォルニア大学サンタクルズ校のPaytan博士に指導いただいてバライト抽出手順も把握でき,専門のPDの採用も叶った.このように研究のバックグラウンドが完全に整ったので,本年度にこれまで予定していた分析を集中して行っていく.まずはLeg 208, Site 1263の試料のバライト抽出とその硫黄同位体比分析,そして北極海からの中層水流出口に近いと考えられるIODP Exp. 342, Site 1410のCASおよびバライトの硫黄同位体比分析に注力していく.抽出の際には一部の試料を小分けにして有孔虫分析用にする.またCASを取り出す際の酸処理前に洗浄・篩がけを行い,ネオジム同位体測定用の魚の歯を抽出していく.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 455 ページ: 1-15
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Nature Communications
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doi:10.1186/s40645-015-0048-3
http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/Paleo_Lab/index.html