研究課題
地球上部マントルで観測される地震波速度異方性は、弾性異方性を持つかんらん石の結晶軸選択配向(CPO)が主要な原因と考えられている。一般的に、CPOは粒子回転を生む転位クリープによって発達すると説明されるが、我々は、Miyazaki et al. (2013)において、これまでCPOが発達しないと考えられてきた拡散クリープ下におけるCPOの発現を実験的に示し、またそのCPOの発達機構を提案した。それは、結晶学的に制御された粒子の長軸と平行な低指数面粒界において選択的にすべりが生じ、このすべりに従う方向に、剛体的に粒子が回転する。その結果、CPOが発達する。今年度は、この粒子回転が拡散クリープ下では普遍的に生じること、およびCPO発達のみならずCPOを消失させるプロセスとして重要であることをモデルから予想した。これは、マントル内で地震波速度異方性が観られるところ、観られないところの成因の解明につながると考えている。拡散クリープ下でのCPOを消失させるプロセスを実験室下で再現するための実験試料開発を行った。強磁場下でカンラン石の結晶磁気異方性にしたがってカンラン石は結晶軸配向する。強磁場下でカンラン石スラリーの回転方向・速度を利用することで、天然で観られる全てのカンラン石のCPOパターンを再現する高緻密多結晶体の合成に成功した。今後、本試料を用いた高温下での高温変形実験が行われる、結晶軸の回転成分、量と変形の関係を探る予定である。
2: おおむね順調に進展している
拡散クリープ下での粒子回転のモデル化が進捗し、論文として現在、国際誌に投稿中である。
粒子回転を支配する粒界粘性が、融点近傍で変化する実験結果が得られつつあり、その実態の理解に努める。
すべて 2016
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)