研究課題/領域番号 |
26247089
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺崎 英紀 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (50374898)
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研究分担者 |
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (10423435)
浦川 啓 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30201958)
鎌田 誠司 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30611793)
坂巻 竜也 東北大学, 理学研究科, 助教 (30630769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中心核 / 音速 / 密度 / 水星 / 火星 / 高圧 / 鉄合金 |
研究実績の概要 |
本研究では、高温高圧実験により測定した鉄-軽元素系合金の液体と固体の物性と観測データを比較することにより、水星及び火星の中心核の組成・内部構造・ダイナミクスの解明を目指している。研究分担者(浦川博士・肥後博士・坂巻博士・鎌田博士)と協力して高圧下における各種測定の技術開発を行いつつ、2016年度は下記の惑星核の構成物質候補の液体と固体状態における高圧物性に関する研究結果を得ることが出来た。 ・超音波法とX線吸収法を用いて、Fe-Ni-Sと、Fe-Ni-Si、Fe-Ni-S-Si、Fe-Ni, Fe-S、Fe-C融体について音速と密度の圧力・温度・組成依存性を2.5~15 GPaの条件で測定し、体積弾性率を導いた(Kuwabara+ 2016, Shimoyama+ 2016)。Fe-SとFe-C融体については熱膨張率も決定した。また弾性特性を求める上で必須となる一気圧の密度・音速を測定するために設計した高温真空炉を新たに導入した。更に密度測定の圧力拡張に向け、外熱式ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いたX線吸収法の開発も行った。 ・鉄合金固体については、Fe-Si合金の音速・密度を超音波法とX線回折を用いて同時測定し、体積弾性率・剛性率を導出した。またFe-Si合金は温度圧力条件によって安定相が異なるため、各相(bcc、fcc構造)の物性も測定し構造による差違についても確認した。またFe3S相については、非弾性X線散乱法を用いて60 GPa,1900 Kまでの条件で音速測定を行なった。これより高圧下でのFe3S固体の音速への温度の効果が明らかとなった。 ・核の弾性特性については、著書"Deep Earth: Physics and chemistry of the lower mantle and core"(Wiley, 2016、申請者が筆頭編者)の中で1章にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は、SPring-8の3つのビームライン(BL04B1,BL22XU,BL35XU)において、様々な組成の鉄合金(Fe-Ni-S、Fe-Ni-Si、Fe-Ni-S-Si、Fe-S, Fe-Si、Fe-C)の固相と液相の音速と密度を15 GPaまでの条件で系統的に調べることに成功した。これにより音速と密度に与える圧力・温度・組成の効果が明らかとなり、さらに体積弾性率や熱膨張率といった弾性特性も求めることができた。本研究によって様々な組成を持つ鉄-軽元素系合金の液体と固体の弾性特性データが揃いつつある。これは水星と火星の惑星内部構造と核組成を推定する上で非常に意義が大きな進歩であり、来年予定されているNASAの火星内部探査(InSight計画)から得られるデータと比較する上でも重要なデータベースとなることが期待される。加えて2016年度は圧力拡張に向けた密度測定開発も実施し、高圧プレスおよび外熱DACを用いたイメージング吸収法による10GPa以上での測定が可能となった。以上のように本年度の研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、さらに圧力を拡張した条件で物性測定を行い、測定結果に基づいたモデリングから下記の項目を推進していく。 ・超音波測定システムを更にグレードアップし、また融体密度測定のためのX線フラックス測定システムの整備を行う。同時にDACを用いた密度および粘性測定についても実施する。 ・溶融核については、これまでに得たFe-FeS系の3.5GPaにおける密度の温度・組成依存性とFe-FeS系の相関係の熱力学的解析から10GPa以上における融体の密度に対する制約を検討する。さらにFe-Ni-SとFe-Ni-Si融体の弾性結果と衛星観測データとの比較を行い、惑星溶融核の組成・サイズを推定する。 ・固体核に関しては、Fe-Si組成について20GPaまでの圧力条件でFe-Si合金固体の音速測定を行い、音速と密度の圧力・温度・組成依存性を明らかにする。またFe-S組成についてはFe3S固体の音速測定の圧力領域を80 GPa程度まで拡張し,音速に対する温度と圧力の効果を調べる。以上の結果を基に水星と火星の内核の組成および構造を検討する。 ・以上の鉄合金の液体および固体の弾性データと最新の衛星観測データを用いて、惑星内部の組成と構造のモデリングを実施する。さらに高圧下での鉄合金の粘性測定データを用いて、弾性データより見積もった内部構造に基づき、水星と火星の核内部における熱輸送・ダイナミクスを検討する。得られた結果については国際学術雑誌に順次投稿し、発表する。
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