研究課題
昨年度までに実施したアフリカ・カメルーン調査での採取試料について、主成分・微量元素組成、同位体比組成分析を進めた。また既にデータの得られているOku火山(カメルーン火山列の陸側北東部、CO2放出で有名なニオス湖を含む)について解析を行った。その結果、平均的にはFOZOと呼ばれる比較的液相濃集元素に枯渇した仮想的なマントル端成分に近いものの、EM1(水溶液成分に富むと解釈されるマントル端成分)に向かって線形なトレンドを形成することが分かった。独立成分分析の観点からは、これらのマグマは、メルト成分(IC1)に富む点で「プルーム」型であると同時に、水溶液成分(IC2)に枯渇したものから比較的富むものまで連続的に組成を変化させることが分かった。南太平洋の火山島群でも同様の変化が認められ、これらは沈み込む海洋地殻成分(脱水部分)とその上の含水境界層(加水部分)であると解釈された(Iwamori & Nakamura, 2015)。並行して、南太平洋の代表的火山島であるピトケアンの調査・試料採取を行い、新鮮なガラス質試料を含む多数試料を得た。また、水-元素輸送を含むマントル対流シミュレーションコードの構築を進めた。さらに独立成分分析を用いたグローバルな同位体組成構造解析を進め、マントルと内核が酷似する東西半球構造を呈すること、その半球構造の成因は、地球深部ではなく、表層付近の超大陸分布とそこに集中したプレートの沈み込みが、化学的・熱的半球構造をうみだしていること「Top-down Hemispherical Dynamics」を提唱した。これらの成果は、国際学会のキーノート講演および国際誌に発表された。
2: おおむね順調に進展している
計画通りにアフリカ・カメルーンの試料分析を進め、また南太平洋・ピトケアン島の調査・試料採取を実施した。シミュレーションコードの作成も順調に進み、水がマントル物質の粘性・密度に及ぼす影響を考慮した沈み込み帯スケール~全球スケールのコードがほぼ完成した。また独立成分分析を用いた玄武岩-マントルの同位体比解析についても順調に発表・公表が進み、IUGGでの基調講演、国際誌Gondwana Researchでの発表に至った。
カメルーン火山列全体についてのデータ解析、特に独立成分分析を進め、大陸リソスフェア・大陸地殻が、プルームやIC構造に及ぼす影響を定量的に把握する。また、南太平洋ピトケアンの採取試料については、SIMS、ICP-MS等の微小領域分析を包有物やガラス試料に対して進め、地球内部物質循環についての制約を得る。シミュレーションについては、水が岩石物性に及ぼす影響を考慮した計算を実行し、ダイナミクスとの関連性や半球構造の成因についての知見を得る。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Chemical Geology
巻: 406 ページ: 55-69
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Gondwana Research
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Geochem. Geophys. Geosys.
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