研究課題/領域番号 |
26247092
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉田 精司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80313203)
|
研究分担者 |
笠原 慧 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (00550500)
齋藤 義文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (30260011)
亀田 真吾 立教大学, 理学部, 准教授 (30455464)
三浦 弥生 東京大学, 地震研究所, 助教 (90282730)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 惑星探査 / 年代計測 / アイソクロン法 / K-Ar年代 / 衛星搭載装置開発 |
研究実績の概要 |
(1) 飛行時間型質量分析計(TOF-MS)の設計:イオンの加速方法・イオン軌道・収率・質量分解能をイオン軌道計算によって決定した。飛行時間における初期位置、初期エネルギーのばらつきに関する解析解から、装置の寸法と印加する電圧の比を設定した。これらのパラメタを基に設計を行い、直径10 cm、全長20 cm程度のサイズ、数kVの印加電圧でAr同位体計測に必要な質量分解能が達成可能であることを確認した。図面を作成した上で、実験に供することができるプロトタイプ装置を製作した。また、イオンの自由飛行区間全体を負電位に設定することにより、イオンの引出し電極に印加する電圧を低くできる設計を採用した。これによって計測の繰り返し周波数を数kHzまで向上させることができた。 (2)真空槽開発:真空容器の封止のために通常用いられる金属ガスケットは、締め付け時に大きなトルクが必要である。そこで、より低トルクで繰り返しの開閉が可能なゴム製Oリングを用いる方法を開発した。質量分析計を用いたアルゴンガスのブランク計測の結果、周囲が真空であり大気が透過することのない月では、事前に充分なベーキングを施してゴムの脱ガスを進めておけば、要求される40Ar量の10分の1以下までブランクレベルを低減できることが分かった。また、気圧が約6 hPaの火星でも、ダブルOリングを用いた差動排気を用いることで、同様にアルゴンのブランクを低くできることが明らかになった。加えて、これらのOリングについて-60℃~+30℃の低温サイクル試験を実施し、火星のような低温環境でもこれらが使用可能であるという見通しを得た。 (3)着陸地点検討:火星表面の高解像度画像を用いたクレーターカウンティングにより、年代計測装置の着陸候補地点としてSyrtis Major・タルシス地帯北東部、およびアマゾニス平原周縁部のヘスペリア代火山岩地帯を選定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機器設計および実証実験の両面で、本研究課題の中心テーマであるK-Ar年代計測装置に必要な重要コンポーネントのそれぞれで当初計画通りの検討・試作が進捗しており、順調な進展状況であると評価して良いと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
K-Ar年代計測装置は、日本の固体惑星科学コミュニティーでも将来の惑星探査機にも搭載すべき価値の高い装置との評価を得ていると認識している。しかし、具体的な探査計画が確定することとは、大きな隔たりがある。機器開発は本研究計画で申請した方針を踏襲して、地道な作業を通じて進めて行く必要があるが、真に開発の成果を得るためには探査機に搭載することが必要である。今後は、並行して、国の内外の探査機打上機会や検討機会にこれまで以上に積極的に参画して搭載機会を模索する活動を展開している必要があると考えている。
|