研究課題
本年度に得られた研究成果は以下の通りである。火星および月の探査ローバに搭載可能な重量・電力・寸法の条件を満たして且つ宇宙仕様部品のみで構成できる飛行時間型質量計のプロトタイプ(寸法と機能は宇宙仕様品と同等だが耐環境性能と重量は民生品レベルの部品で構成)の製作を完了した。試験運転と機器調整の結果、K-Ar年代計測に必要な質量分解能M/ΔM≧100を達成できることが確認できた。また、昨年度に導入した小型レーザーを用いて耐環境実験とLIBS(レーザー誘起絶縁破壊分光計測)実験を実施し、月・火星探査に必要な耐環境性能を持つこと及び十分な精度のLIBS計測を成立させられる光量を確保できることを確認した。また、このレーザーの直流電源ユニットも宇宙仕様品で構成できることも確認した。両者を組み合わせれば、小型ローバに搭載可能な寸法に収めることができるため、来年度の伊豆大島でのフィールド実験の目処が立った。加えて、使い捨て部品を用いずに繰り返し開閉が可能で且つ必要トルクが低いOリングによる真空保持機構の開発を昨年に引き続き行った。今年度は特に低温耐性を持つOリング材質のバイトンからの脱ガス特性を調査し、K-Ar年代計測に必要な性能が確保されることが分かった。さらに、月および火星の着陸探査機に搭載するための試料取り回し機構の検討を行い、小型カメラ、試料捕獲アーム、試料保持カップ、コア抜きドリルという最小限のコンポーネント構成で、惑星表面に期待される様々な大きさの岩石を捕獲してK-Ar計測に必要な一定の大きさと形状の試料に成形できるシステムの概念設計ができた。
2: おおむね順調に進展している
機器設計および実証実験の両面で、本研究課題の中心テーマであるK-Ar年代計測装置に必要な重要コンポーネントのそれぞれで当初計画通りの検討・試作が進捗しており、順調な進展状況であると評価して良いと考えている。
K-Ar年代計測装置は、日本の固体惑星科学コミュニティーでも将来の惑星探査機にも搭載すべき価値の高い装置との評価を得ていると認識している。しかし、具体的な探査計画が確定することとは、大きな隔たりがある。機器開発は本研究計画で申請した方針を踏襲して、地道な作業を通じて進めて行く必要があるが、真に開発の成果を得るためには探査機に搭載することが必要である。今後は、並行して、国の内外の探査機打上機会や検討機会にこれまで以上に積極的に参画して搭載機会を模索する活動に注力していく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)
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