研究実績の概要 |
本研究では8つの希土類元素La, Ce, Nd, Sm, Gd, Dy, Er, Ybの核化学的特長に着目し、それらの同位体組成を高精度に分析することにより(1)太陽系内物質を構成する元素の起源を解明すること、(2)太陽系内始原物質の初期分化に伴う物質移動を読み取ること、(3)始原物質の初期分化がいつ生じたかについて時間軸を設定すること、を目的としている。 地球外物質から一連の操作で効率よくLa, Ce, Nd, Sm, Gd, Dy, Er, Ybを化学分離する方法、ならびに熱イオン化質量分析計(TIMS)を用いて繰り返し測定誤差100 ppm以下のレベルで各元素の同位体組成を高精度測定する手法の開発に取り組んだ。化学分離については米アイクローム社製Lnレジンを用いて0.15~2.5 M HClを溶離液とすることで上記8つの希土類元素の単離に成功した。TIMSによる高精度同位体測定法に関しては、特に着目している同位体が存在度の低いものが多いため、イオンビーム強度の高い状態で測定する必要があるが、各元素のビーム強度として10E-10 A程度のイオン電流が確保できれば、高精度同位体測定が再現よく実施できた。 上記手法を非コンドライト隕石であるユークライト隕石、月表土試料に応用し、(1)3つの放射壊変系138La-138Ce, 146Sm-142Nd, 147Sm-143Ndに基づく年代学データの取得、(2)中性子捕獲反応による149Sm-150Sm, 157Gd-158Gdの同位体シフトに基づく宇宙線照射履歴の解読、(3)p-過程同位体である138La, 136Ce, 144Sm, 156Dy, 158Dy, 162Er, 164Er, 168Yb, 170Ybの同位体存在度の高精度決定、について実施した。 今後、非コンドライト隕石であるダイオジェナイト、太陽系始原物質であるコンドライト隕石について同様の分析を行い、それらの同位体データを比較することにより、個々の惑星物質が置かれてきた宇宙環境および進化過程を詳細に議論することを考えている。
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