研究課題/領域番号 |
26247096
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安藤 晃 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90182998)
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研究分担者 |
高橋 和貴 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80451491)
國中 均 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (60234465)
永岡 賢一 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20353443)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気ノズル / プラズマ推進 / プラズマ加速 / ラバールノズル |
研究実績の概要 |
初年度である平成26年度は,MPDスラスタやVASIMRスラスタに代表される磁気ノズルスラスタの動作測定を評価するために高排気速度の真空排気系を整備し,次年度に向けての研究環境基盤の整備を行った.その結果,直径1m, 長さ2mの真空容器において,実効排気速度5000-6000 L/sec を実現することに成功した.また各種小型・中型装置で各種スラスタ方式の基礎的な計測やパラメータの同定を進めた. MPDスラスタでは,ラバール型の磁気ノズル配置を採用し,推進性能を向上させることに成功した.磁気ノズル中を流れるプラズマ電流を計測しローレンツ力を評価したところ,ローレンツ力では加速力を説明できず,MPDスラスタのパラメータ領域では空力的な加速が支配的であることが示唆された.また等エントロピー流体モデルと計測したプラズマ流速の比較を行ったところおおむね良い一致を示したが,特に磁場強度が強い領域においてはモデルと実験の差異が観測された.このことから,MPDスラスタでは数種類の加速機構が同時に働いている可能性が示唆されたといえる. VASIMRスラスタでは,まずは10kW級の高周波プラズマ生成方式および追加熱方式を,数100kHz帯のインバータ電源で実現するために,パルス強磁場発生電源の整備と加熱アンテナなどの最適化を図った.その結果,効率よくイオンサイクロトロン共鳴加熱が起こる条件では,プラズマが壁面へと損失する問題点が浮上した.その問題を回避するために,プラズマ容器壁の形状を円錐状にするなどの検討を行った. またヘリコンスラスタ方式では,高効率プラズマ生成を実現するために,プラズマ源出口近傍にオリフィスを設置することでヘリコンモードジャンプを容易に起こす手法を開発することに成功した.またその物理現象を理解するために波動計測を実施し,定在波の寄与が大きいことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,真空排気系の増強および各種スラスタ方式における基礎実験を順調に進め,それぞれのスラスタのパラメータ領域で固有の加速機構や損失過程が発見されている.特に磁気ノズル中で複数の加速機構が重畳している可能性が示唆されたため,それらの寄与率が各種パラメータで変化するかを実験的に検証することで,磁気ノズル中のプラズマ加速機構を体系的に明らかにすることが今後可能になると期待される. 以上の理由から,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
MPDスラスタに関しては,ラバール磁気ノズルの最適化を行い,電磁力計測等を継続して進め,推力計測結果との比較検討を行うことで,加速機構の解明につながるデータを取得する.またドップラーシフト分光等を駆使することで,流速と推力計測結果の関連性等を明らかにしていく. VASIMRスラスタでは,壁面へと損失する運動量を軸方向運動量へと変換するために固体ノズルを追配備し,高効率化を進める.またイオン温度計測や流速計測などは,静電イオンエネルギーアナライザを使用し,加速評価を実施する. ヘリコンスラスタでは,可動式終端板によるローレンツ力空間分布計測や,プラズマ電流計測によるローレンツ力の評価を実施し,MPDスラスタとは異なるパラメータ領域での学理の探求に努める. 初年度に構築した電気推進試験設備では,上記のスラスタの推進性能評価と,背景圧力を低く維持した状態での各種プラズマ諸量の変化を観測し,中性粒子との相互作用を排除した状態でのプラズマ加速機構の解明を進める.
上記により,広範なパラメータ領域における磁気ノズルプラズマ流ダイナミクスの総合的理解を進める.
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