研究課題/領域番号 |
26248004
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大内 幸雄 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60194081)
|
研究分担者 |
西 直哉 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10372567)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 表面・界面物性 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
イオン液体は1992年[emim]BF4の合成以来、特異な熱力学物性や電気化学特性、多様な構造形成性により高い感心を集め、幅広い分野で研究が続けられている。特にここ数年、環境問題やバイオ・エネルギープロセスに関連して、イオン液体/分子液体界面における局所高電界環境下での構造ダイナミクス、ならびに物質輸送の学理構築が喫緊の課題として位置づけられている。本研究は、古典的な界面電気化学が、とりわけ無溶媒電解質液体であるイオン液体に暗黙の内に適用される誤った現状に鑑み、これを物理化学の基礎的問題として再構築し、当該分野の誤謬の解決を図る。 我々が界面計測において多用する赤外-可視和周波発生振動分光法(IV-SFG法)は表面・界面選択性の高い計測法であり、界面分子配向の情報などを与える優れたツールである。そこで、本年度はイオン液体の界面効果が重要な役割を果たす電気二重層キャパシターにおいて、Li+の添加効果を詳細に検討した。具体的には汎用的に用いられるイオン液体:1-エチル3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)アミド([emim][FSA])に微量のLi+を添加し、電気二重層容量の増大効果を電極表面構造との相関で理解しようとするものである。IV-SFG法を還元側の電極に適用したところLi+の選択的吸着とそれに伴うアニオンの付加が確認され、そのイオン種がカチオンの還元を抑制し、従って電気化学窓の拡張と電気二重層容量の増大に結び付いていることが明らかになった。この知見はイオン液体を広くLi+電池に展開する場合にも有益な情報であり、波及効果の高い成果と言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン液体/電解質界面ならびにイオン液体/固体界面におけるIV-SFG法の適用と、それによる微視的構造変化の電位依存性を問題無く測定できる技術が確立した。研究課題は概ね順調に進展している。今後はイオン液体の重要なパラメータの一つであるマーデルング係数の測定を通じて、界面での凝集構造がバルクのそれとどのように異なるかを明らかにする必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
IV-SFG法は表面・界面選択制の高い振動分光法であり、界面分子配向の情報などを与える優れたツールであるが、界面垂直方向の弁別性に欠けるという本質的な問題点を抱えている。このため、分光エリプソメトリー法をX線反射率測定に併せてイオン液体/分子液体界面計測に展開し、これまでのIV-SFG法と同様な電位制御機構を組み込むことにより同一試料・同一条件でのin-situ測定に取り組み、界面垂直方向の情報取得を目指したい。また、電極反応のヒステリシス効果を検討するため真空蒸着法などの成膜技術により逐次イオン液体膜を作成し、光電子分光計測を経てマーデルングエネルギーを算出し、ヒステリシスのオーバーレーヤー効果とそのエネルギー障壁の評価につなげたい。
|