研究課題/領域番号 |
26248006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 美智雄 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30281116)
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研究分担者 |
蔡 徳七 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (20273732)
Dino Wilson 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379146)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面・界面 / 表面反応 / 2次元シリコン構造 |
研究実績の概要 |
分子ビーム技術と分光技術の融合技術を用いて、2次元Si構造で形成するモデル表面系の反応性を明らかにし、ロコー反応の素過程解明とチューニングを目指して研究を進めてきている。 A.貴金属銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)およびその合金表面上における2次元Si構造の構築 Cuステップ表面へのSi蒸着については、電子ビーム蒸着エバポレーターを調整し、蒸着源の最適化を行った。Si蒸着により2次元表面構造を作製することに成功し、低速電子回折による観察の結果、Cuシリサイドをユニットとする構造であることがわかった。また比較のため、26年度に引き続きバルクCuシリサイド多結晶プレートを準備して、清浄化ならびに表面特性の評価をX線光電子分光行い反応実験の準備を行った。さらに今後基板をAgおよびAuに展開するための準備を行った。一方、基板となる銅金合金表面については26年度に構造評価を行ったが、27年度には理論的な側面から詳細に検討しまとめた。Auの含有量により表面近傍のAu原子層プロファイルが大きく変化することを見出した。 B.2次元Si構造の反応性解明 Cuそのものの反応性を調べるために、Cuステップ表面において塩化メチルを始めとする分子を用いて反応性を評価した26年度の実験結果を、27年度には理論的考察を含めて解析しまとめた。どの分子もステップエッジとの相互作用が強く、反応性にステップの寄与が高いことが実験および理論の両側面からわかった。A.において作製したSi/Cu表面と塩化メチル分子との反応性を反射赤外吸収分光やオージェ電子分光により調べた。その結果、Cuシリサイド二次元ユニットの大きな反応性を示唆する結果を得た。比較のために、純粋な成分のCuおよびSi表面について、塩化メチル分子ビームを用いて反応性を調べた。純粋な成分の表面では低エネルギー領域では反応しないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度には、26年度に購入した電子ビーム蒸着エバポレーターを調整し、シリコン原子蒸着のための最適条件を見いだすことができた。また、その蒸着源を用いてCu(410)表面に2次元構造を構築することに成功し、その反応性を評価することができた。さらに基板をAg, Auに変更して研究を進めていく準備を整えることができ、順調に計画が進行している。 Si/Cu(410)表面と塩化メチル分子との反応性については、反射赤外吸収分光(IRAS)やオージェ電子分光により明らかにできた。その結果、Cuシリサイド二次元ユニットの大きな反応性を示唆する結果を得た。これはロコー反応素過程の理解に重要な結果と考えている。比較のために、純粋成分のCu(111)およびSi(111)について、塩化メチル分子ビームを用いて反応性を調べた。本年度超音速塩化メチル分子ビームを用いた反応性評価をスタート出来たのは大きな収穫である。 その他、Cuそのものの反応性を調べるためにCu(410)ステップ表面においてエチレン・一酸化炭素・塩化メチルを用いて、IRASにより反応性を評価した26年度の結果を理論的考察を含めてまとめることができた。理論・実験を両輪として研究が進んでおりその面でも順調である。 量子状態制御の分子ビームを用いた研究展開はやや遅れているが、全体として概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
A.貴金属銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)およびその合金表面上における2次元Si構造の構築 この研究項目については、研究を軌道に載せることができたと考えており、今後シリコン原子を蒸着する基板をAg, AuおよびCuAu合金に変更してさらに研究を進める予定にしている。28年度には、これら作製した表面の走査型トンネル顕微鏡を用いた評価も推進していく予定である。 B.2次元Si構造の反応性解明 28年度には反応性にの解明を積極的に進めたい。27年度に塩化メチル分子の超音速分子ビームを発生したが、高エネルギー領域で必要となるノズル加熱の際に反応が起こってしまいノズルが詰まるという問題が生じた。しかし、高いエネルギーでは塩化メチル分子がシリコン表面と反応するということを予備実験で見いだしており、それを糸口にして反応機構の全容を解明したいと考えている。そこで今後は、実験に使用可能なノズル温度の範囲を詳細に調査して研究を推進していく予定である。また、28年度には量子状態を制御した塩化メチル分子ビームを発生し、量子状態まで含めた反応の理解に努めたいと考えている。これら反応の研究を項目Aで用意した2次元表面系で逐次推進していく予定である。
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