研究課題/領域番号 |
26248008
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
近藤 寛 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80302800)
|
研究分担者 |
吉田 真明 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (00582206)
雨宮 健太 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (80313196)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 触媒・化学プロセス / 表面・界面物性 / 量子ビーム / 化学物理 |
研究実績の概要 |
平成27年度は本課題の2年目であり、初年度に製作した赤外線オペランド分光装置の立ち上げと、軟X線オペランド分光装置の立ち上げおよび応用実験を中心に行った。 製作した赤外線オぺランド分光装置は、超高真空試料準備槽を備えた反応セルに偏光変調赤外反射吸収分光測定系を合体した構成になっており、各構成部は初年度において完成した。本年度はこの装置全体をシステムとして立ち上げ、試料導入、試料準備、分光測定までの一連の実験作業が問題なく行えるようにした。すでに報告例のあるPd(111)およびRh(111)単結晶表面へのCO吸着を本装置の赤外分光系で測定し、超高真空から200 Torrまでの幅広い圧力範囲で文献と矛盾しない良好な偏光変調赤外反射吸収スペクトルが得られることを確認した。さらに、後で述べる軟X線オペランド分光装置で先行して実験を進めたPd70Au30(111)合金表面へのCO吸着について、赤外線オぺランド分光装置でも測定を行い、X線光電子分光の測定結果を赤外反射吸収分光からも支持する結果を得ることができた。 軟X線オペランド分光装置の立ち上げとして、本年度はシリコンドリフト検出器を導入して、蛍光収量による軟X線吸収分光測定ができる装置に高度化した。これにより、試料表面近傍の化学種だけでなく、試料内部の化学種を検出することができるようになった。この手法により、エチレンエポキシ化に用いる銀触媒内部に存在する化学種を同定することができた。また、赤外線オペランド分光装置でも実験を行うことを想定して軟X線オペランド分光装置で実験を行った。具体的には、Pd70Au30(111)合金表面へのCO吸着およびIr(111)におけるNO+CO反応の詳細な解析を行い、前者では高圧誘起のCOのサイトスイッチング、後者では触媒活性時のIrの表面状態とNOの還元機構を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の主たる目標は赤外線オペランド分光装置と軟X線オペランド分光装置を立ち上げることであるが、現時点でシステムとして問題なく動作することを確認し、具体的な実験系でデータを得ることができるようになり始めたので、おおむね当初の計画どおり進展していると言える。また、一つの触媒系に対して両装置を融合的に用いるという当初の目標に関しても、本年度はPdAu合金系に対して両装置で相補的なデータを得ることができたという点で目標を達成することができるようになり始めた。さらに、両装置を融合的に用いることを深化させるために、本年度はその予備的実験を軟X線オペランド本装置で行うことができたので、平成28年度に赤外線オペランド分光装置による測定を行うことで本課題の目標を達成することが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は平成27年度に立ち上げた赤外線オペランド分光装置および軟X線オペランド分光装置の性能をさらに高めながら、準大気圧で誘起される吸着状態や準大気圧で進行する触媒反応を両装置で観測する。両装置のデータを融合的に用いて、赤外線・軟X線その場観測で固体表面の振る舞いや反応機構を調べるアプローチを確立することを目指す。そして、このようなアプローチを用いて初めて分かるような触媒反応への応用研究を展開することを目指す。
|