研究課題/領域番号 |
26248010
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
小杉 信博 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 教授 (20153546)
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研究分担者 |
繁政 英治 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 准教授 (90226118)
大東 琢治 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教 (50375169)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 内殻励起 / X線顕微分光 / その場観測 / 薬物伝達 |
研究実績の概要 |
装置開発研究の実績は、1.試料セル開発・改良として、UVSOR施設のBL3U軟X線吸収分光装置(顕微機能はない)用に開発した2μm~20nmまでの試料厚制御可能なその場観測用液体層流セルを顕微装置に組み込み、その場観測を可能とした。2.軟X線吸収顕微分光装置の高度化として、UVSOR施設のBL4U軟X線分光器のスキャンに合わせて集光位置決めと光強度補正を正確に行うための機械的改良を行った。液体セルの試料台をnm精度で面内走査(ラスタースキャン)し、レーザー干渉計によってゾーンプレートのアパーチャーと試料の位置合わせを行う機構の改良によって空間分解能を向上させた。3.BL4U軟X線分光器の高度化として、炭素内殻領域軟X線利用を妨害していた炭素汚れの除去を行った。これらの開発・改良・高度化によって10meVのスペクトルシフトが議論できる波長走査精度と30nmの空間分解能でその場観測可能な軟X線吸収顕微分光装置を通常実験に使えるようにした。 利用研究として、1.溶液構造の変化と異なる場所での内殻準位シフトから分子間相互作用の違いを区別した局所化学状態分析、 2.電極を組み込んだ液体セルを用いた電極反応系の局所化学状態分析をドイツ・ヘルムホルツ協会ベルリン研究センター、カナダ・マックマスター大学の研究者と共同して行った。3.経皮薬物伝達による分布と化学状態変化の高感度・無染色イメージングを、ドイツ・ベルリン自由大学、タイ・チュラロンコン大学の研究者と共同して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
装置開発研究として、10meVのエネルギー分解能と30nmの空間分解能でその場観測可能な軟X線吸収顕微分光装置は順調に計画通りに立ち上がり、利用研究も順次、進んでいる。装置の紹介を含めた招待論文を発表するとともに、Webページ上でも装置紹介を行った。また、その場観測不均一触媒反応に応用した成果はまとめて国際誌に論文発表した。現在、経皮薬物伝達による分布と化学状態変化の高感度・無染色イメージングの研究結果を論文にまとめて投稿したところ、軽微の修正で済むとの審査結果を受け、現在、再投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も試料に応じた各種その場観測セルの開発・改良を継続して行う必要があるが、顕微機能のない既存のBL3Uと顕微機能のある新規なBL4Uの併用が可能になっているので、それらに共通に使えるように開発したその場観測用液体層流セルを利用して、軟X線吸収測定及び顕微鏡観測に適した試料条件を探索する。このような強みを生かして開発している各種試料セルは国際的にも関心を持たれて問い合わせがたびたび来るような状況になっているが、現在のところ、その利用は本研究グループとの国際共同の範囲に限っている。今後、確立したものについてはできるだけ広く公開することを考えている。
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