研究課題
装置開発研究の実績として、1.UVSOR施設のBL3U軟X線吸収分光装置(顕微機能はない)においても、ミクロンオーダーの顕微観測を可能にした。集光機能はなくミクロンオーダーのスリットで光ビームを切り出す方法を用いたので、ナノ分解能はない。2.ナノ分解能を持つBL4U軟X線吸収顕微分光装置の高度化として、これまで二次元イメージングに留まっていた顕微観察を越えるために、試料回転機構を組み込み、コンピュータートモグラフィー(CT)によるデータ処理を可能にすることで三次元イメージングの検討を行った。3.BL4U軟X線分光器の高度化として、炭素内殻領域軟X線利用を妨害していた炭素汚れの除去を毎週、継続して行うことで、炭素領域の実験がコンスタントにできるようになった。利用研究として、1.トリエチルアミン水溶液におけるミクロンオーダーの相分離の顕微観測を行った。実験条件の最適化ができず、界面付近での顕著な電子構造変化は観測されなかった。今後、実験条件の最適化を行ったのち、再実験を計画している。 2.マイクロ流路を使った化学反応系の局所化学状態分析をドイツ・ヘルムホルツ協会ベルリン研究センター、カナダ・マックマスター大学の研究者と共同して行った。3.経皮薬物伝達による分布と化学状態変化の高感度・無染色イメージングを、ドイツ・ベルリン自由大学の研究者と共同して行った。昨年のデキサメタゾンではなく、分子量の大きなタクロリムスを試料とした。今回の薬剤のスペクトルは皮膚のスペクトルと差が小さかったが、わずかの差を活かして、薬剤の分布イメージングをはっきり観測することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
これまで国際共同で手がけてきた薬物伝達の軟X線顕微分光観察の研究成果と軟X線透過吸収分光によるその場観測手法の総説を順調に国際誌に発表することができた。さらに、当初、30nmの空間分解能で2次元イメージングが可能な軟X線吸収顕微分光装置と空間分解能のない軟X線吸収顕微分光装置を利用して研究を展開する予定であったが、その後の新たな技術開発により、前者は3次元イメージングを可能にする機能の導入、後者はミクロンスケールであるが顕微機能の導入にそれぞれ成功し、当初の計画以上に目的としている研究が進んでいると判断した。
ミクロンスケールの顕微機能のあるBL3Uとナノスケールの顕微機能のあるBL4Uの軟X線透過吸収顕微分光装置の併用が可能になっているので、それらに共通に使えるその場観測用液体層流セルの開発を継続する。このような強みを生かした各種試料セルは国際的にも関心を持たれて問い合わせがたびたび来るような状況になっているため、確立したものについてはできるだけ広く公開すると同時に、当初計画に沿った利用分野において、国際共同を拡大する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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http://www.ims.ac.jp/about/publication/70-14.pdf