研究課題
ayer-by-Layer法を用いることで配向成長したナノメートルサイズのMOF薄膜を合成した。まず、4-メルカプトピリジンのエタノール溶液に金基板を浸すことで、アンカーとなる自己組織化単分子膜を作製しました。その後、この基板をMOFの構成要素であるピリジンを含んだ鉄イオン、テトラシアノ白金錯体の二種類のエタノール溶液に順次浸し、この手順を30サイクル繰り返すことにより、目的のMOFの薄膜を基板上に組み上げた。SPring-8 BL13XUビームラインの放射光を用いた精密なX線回折実験から基板面に平行方向の情報を含む面内配置、基板面に垂直方向の情報を含む面外配置共に明瞭なピークが観測され、得られたMOF 薄膜が面内方向、面外方向共に結晶性であることが実証できた。次に、エタノール分子の蒸気にこの薄膜を晒して放射光X線回折実験を行ったところ、驚くべきことにエタノールの蒸気圧が上がるとあたかもゲートが開くようにMOF の層間距離が広がることでエタノール分子を取り込み、蒸気圧が下がると取り込んだエタノール分子を放出しながらゲートを閉じるように層間距離が縮むことが明らかになった。さらに、薄膜作製時のLayer-by-Layer法のサイクル数を増やし、厚みを人工的に増やした薄膜では、エタノールの蒸気に晒しても層間距離は変化せず、分子が取り込まれないことが分った。この結果はMOFの持つ隠れた分子吸着機能が、ナノメートルスケールで薄膜の厚みをコントロールすることで初めて機能することを実験的に実証できたと言える。
2: おおむね順調に進展している
本研究で発見した現象は、サイズが変わると性質が真逆に変化する多孔性材料を初めて発見したということであり、これはこれまでに観測されたことの無い新しい現象である。つまり、結晶の「サイズ」という因子がMOFに劇的な物性の変化をもたらし得ることを示しており、多孔性材料の示すガス吸着を始めとする基礎物性に結晶のサイズ次第で多くの多様性が生まれることが期待できる。この特徴に加えて、このMOF 薄膜は合成時のサイクル数を変えることにより薄膜の厚みを精密にコントロールすることが出来る。この利点を生かすことで、ガス分子に対する応答性を精密に調節可能なセンサー材料や、ガス分離膜等への応用につながることが期待される。
順調に計画が進んでいるので、予定通り、作製した各種の結晶配向性MOFナノ薄膜の異方的プロトン伝導性を中心に研究を進めると同時に、予定していなかった内容も計画に盛り込んで取り組む予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
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