研究課題/領域番号 |
26248022
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
喜多村 昇 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50134838)
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研究分担者 |
伊藤 亮孝 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20708060)
作田 絵里 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80554378)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強発光・長寿命 / ルテニウム(II)錯体 / 金属6核クラスター / 励起三重項状態 / ゼロ磁場分裂 |
研究実績の概要 |
① 強発光・長寿命アリールホウ素置換ルテニウム(II)錯体の創製:4,4'位にアリールホウ素置換基を有する2,2'-bipyridine (Bbpy)を配位子とする一連のルテニウム(II)錯体([Ru(Bbpy)n(bpy)3-n]2+錯体の合成と光物性に関する研究を行った。Bbpy配位子の数(n)の増大とともにmetal-to-ligand charge transfer (MLCT)吸収帯のモル吸光係数が増大するとともに、それに伴い発光量子収率も増大することを明らかにした。実際にMLCT吸収帯のモル吸光係数と発光速度定数(kr)の間には直線関係が得られ、krに関してStrickler-Bergの関係が成立することを明らかにした。また、室温、アセトニトリル中における[Ru(Bbpy)3]2+錯体の発光量子収率は0.43となり、ポリピリジンルテニウム(II)錯体としては世界最強の強発光性を示すことを見出した。 ② モリブデン6核クラスター錯体の発光特性:ターミナル配位子として一連のカルボン酸(E)を有する[Mo6I8E6]2-錯体の合成と発光特性に関する研究を行い、カルボン酸の酸性度によりクラスター錯体の発光特性(発光エネルギー、無輻射失活速度定数(knr))を制御可能であることを明らかにした。実際に、アセトニトリル中においては、発光エネルギーはカルボン酸の酸性度に依存すること、並びにknrはエネルギーギャップ則に従う事を実験的に示した。また、固体状態においても発光特性はカルボン酸の酸性度に依存することも明らかになっている。発光状態である励起三重項状態のゼロ磁場分裂パラメータとの相関を明らかにすることにより、強発光・長寿命錯体の創製へと研究を展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一連の[Ru(Bbpy)n(bpy)3-n]2+錯体に関する研究を通して、MLCT吸収帯のモル吸光係数と発光速度定数の間に相関が得られ、モル吸光係数が大きいほど強発光性となることを見出したことは、強発光性錯体の設計・創製に対して極めて大きな進展である。実際に、[Ru(Bbpy)3]2+はポリピリジンルテニウム(II)錯体として世界最強の発光性(量子収率0.43)を示すことを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き[Ru(Bbpy)n(bpy)3-n]2+錯体の光物性を詳細に検討するとともに、関連誘導体の新規合成も併せて行う。また、強発光・長寿命が期待される新規モリブデン6核クラスター錯体([Mo6X8X'6] (X = X' = Cl, Br, I)、[Mo6I8(carboxylate)6]2-)の創製と光物性測定を推進する。
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