研究課題/領域番号 |
26248028
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真島 和志 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70159143)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アミド変換反応 / 複核金属錯体 / 低原子価金属錯体 / 卑金属錯体 / 有機ケイ素還元剤 |
研究実績の概要 |
従来、困難とされてきた分子変換反応の達成は、常識と考えられてきた合成反応ルートの革新につながることから基礎と実用において活発な研究が進んでいる。本研究では、「金属間相乗効果を最大限に活かした均一系多核金属錯体触媒の創成」を行い、従来の均一系触媒(単核金属錯体触媒)と質的に異なり、不均一系触媒(固体触媒)とも異なる「均一系多核金属錯体触媒」という新しい触媒化学の分野を確立することを目的として研究を行っている。 今年度はエタノールアミドのN,Oアシル転移を利用したアミドの加アルコール分解において、アミドを配向基とした炭素-水素結合活性化の研究で頻繁に用いられる9-アミノキノリン部位を含むアミド化合物の加アルコール分解反応を検討した。その結果、第2級アミドに対してエポキシ化合物を作用させることでヒドロキシエチル基を窒素上に導入し、亜鉛錯体を触媒として加えることで効率よくアミド分解反応が進行することを明らかにした。従って、本手法は炭素-水素結合活性化を経た官能基変換に多用されるキノリンを配向基とした変換反応に応用可能であることが分かった。 さらに、錯体として低原子価金属錯体を用いて含窒素化合物の分解反応を検討した。その結果、5族遷移金属塩化物と有機ケイ素還元剤により発生させた低原子価金属種と種々のアゾ化合物との反応により、窒素―窒素二重結合が切断されたイミド錯体が生成することを明らかにした。一方、アゾ化合物としてアゾピリジンを用いると、窒素―窒素二重結合が単結合へと変換された二核金属錯体を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アミド官能基の分解反応に対して高い反応性を示す触媒の開発を進めたところ、ヒドロキシエチル基を有するアミドの切断反応に高い活性を示す亜鉛触媒に加え、様々な第三級アミドに対しても高い活性を示す金属クラスター触媒の開発に成功した。この結果は、これまでの亜鉛触媒での置換基特異的なアミド官能基切断活性を大きく凌駕する成果であり、翌年度にむけて反応機構の解明を進めた。これは当初の予想を大きく超える研究成果であり、均一系多核金属錯体触媒の優れた特性を示す成果と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アミド分解に高活性を示す金属クラスター触媒における反応機構の解明に取り組む。特に、添加物として作用する含窒素多座配位子の効果について、金属クラスター錯体との錯形成がどのように進行するか、質量分析を中心にして検討する。さらに、低原子価金属種により、様々な窒素―窒素二重結合を含む有機化合物の分解反応が進行することを見出しており、生成したイミド金属種を用いた有機合成反応への応用について検討するとともに、窒素間三重結合の切断に向けて研究を展開する計画である。
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