【J凝集性共役高分子における励起子拡散の次元性の解明】J凝集性を示す結晶性共役高分子PNOz4Tについて、励起子拡散ダイナミクスを過渡吸収分光測定により観測した。その結果、薄膜においては室温付近では2次元拡散が支配的であり、低温では1次元拡散が支配的になることを見出した。溶液中に分散したPNOz4Tについて同様の測定を行った結果、高分子分子鎖内方向の1次元拡散が支配的であることを見出した。このように励起子拡散の次元性が温度や環境により変化する原因は、励起子拡散の活性化エネルギーに異方性が存在するためであると考えられる。 【高度に結晶化した共役高分子膜における集団励起子の協奏ダイナミクス】J凝集構造を示す高結晶P3HTに対して過渡吸収分光測定を行ったところ、励起子寿命が数psにまで短寿命化し、輻射遷移速度が100倍程度増大していることが分かった。振動バンド解析より有効共役長変化を見積もると通常のH凝集P3HT薄膜に比べると10倍程度であるので、超放射による短寿命化である可能性が示唆される。一方、無輻射遷移速度も同様に100倍程度増大していることが分かった。分子鎖内の有効共役長が著しく増大したことにより2Ag準位が1Bu準位よりも低い位置に低下したことが原因として考えられる。 【分子内D-A性結晶性共役高分子における一重項励起子分裂】分子内D-A特性を有する結晶性PDPP3T薄膜では一重項分裂により三重項励起子が励起直後から効率よく生成することを明らかにした。溶液中と製膜条件を変えた薄膜での一重項分裂を検討した結果、J凝集性が最も高い溶液中では一重項分裂は全く観測されなかった。この結果より、分子内の一重項分裂はこの系では効率よく進行しないと結論した。一方、製膜条件を変えた薄膜では、H凝集性が高い薄膜において一重項分裂による三重項生成効率が高いことを明らかにした。
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