Ig GのFc部位の合成では、各ペプチドセグメント、糖ペプチドセグメントを一般的なFmoc法ではなく、大量合成が期待できるBoc法をFc部位の合成に活用したこと、ならびにヒドラジドライゲーション法を活用することで、原料供給の効率性が向上した。現在、IgG-Fcの量産をおこなっている。天然型のレクチンよりも糖鎖に高い親和力を示すものとしてシグレック誘導体の合成を検討している。化学合成した シグレックの糖鎖結合部位近傍に、人工的な環状ペプチドを追加付加せることで糖鎖への親和力を向上させる検討をした。また、この環状ペプチド5残基程度は、ライブラリー化したものを結合させ、最適なものを見つけられるストラテジーを検討しその目処をたてた。より糖鎖に結合する環状ペプチドの単離、そして配列決定には、環状ペプチドに故意に導入したメチオニンをCNBrで切断し直鎖状にし、そしてペプチドラダー法を利用することが最も簡便であるという結果に至った。現在、シグレックと環状ペプチドライブラリーの量産を検討している。複合型糖鎖をもつアミノ酸400残基程度であるヒトのシアル酸酵素の半化学合成は、構造が解かれ、構造維持に必要な308残基を全長とするものを対象とした。糖鎖の有無はこの酵素活性に重要な役割をしていると考えられ、その機能解明、酵素メカニズムの解明を目指す。全長の318残基を3つのセグメントにわけ、糖鎖を含む全ての各セグメントの合成が完了した。第一セグメント53残基のペプチドチオエステル、第2セグメント42残基は糖ペプチドチオエステルとしてBoc法による合成が完了した。また、第3セグメントは大腸菌発現により調製することに成功し、現在、連結を検討している。膜タンパク質の合成は、予想どおり、ペプチドの溶解性が問題であるため、糖を脱着させることで難溶ペプチドを加溶化させる新規な膜タンパク質合成法を考案した。現在、その手法を発展させる検討をしている。
|