研究課題/領域番号 |
26248044
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩田 忠久 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30281661)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオベースポリマー / プルラン / キチン / キトサン / アルギン酸 / セルロース / エステル誘導体 / 酵素分解性 |
研究実績の概要 |
本研究は、プラスチック生産における石油依存および可食系原料の利用から脱却し、真の持続的な物質循環型社会を構築するために、非可食系バイオマス(ヘミセルロース、多糖類、農産廃棄物抽出成分など)から新規なバイオマスプラスチックを創製することを目的とする。特に、化学構造を制御することにより、機械的性質や熱的性質などの様々な物性が制御された高性能プラスチックの開発を行う。さらに、得られた各々のプラスチックに適した新規な成形加工・複合材料化技術を開発することにより、高強度・高弾性率繊維、高耐熱性フィルム、光学特性フィルムなどの部材化を行う。また、化学構造を制御することによりバイオマスプラスチックに環境分解性や生体内吸収性を付与できることから、農林水産用あるいは医療材料としての評価もあわせて行う。本研究では、新たなバイオマス化学産業創出に向けての基礎及び応用研究を総合的に推進する。 本年度は、微生物が生産するプルラン、エビやカニの殻から得られるキチン・キトサン、コンブから抽出されるアルギン酸などの天然多糖類にも着目し、化学修飾や架橋によりプラスチック化に挑戦した。合成物の分子量、化学構造、ガラス転移点、融点、熱分解温度などの熱的性質、破壊強度などの機械的物性などを詳細に解析した。 多糖類は一般に反応性の異なる2つまたは3つの水酸基を有している。これらの水酸基に異なる官能基を位置選択的に導入する、あるいは、導入する官能基の量を制御するなど、化学構造を精密に制御することにより、酵素分解性の制御を試みた。具体的には、位置選択的に異なる置換度を有するセルロースアセテートを合成し、セルラーゼを用いた酵素分解実験を行った。その結果、C6位の一級水酸基に導入された官能基の量が酵素分解性に大きく寄与することがわかった。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
様々な高分子多糖類から多くの種類のエステル誘導体を合成することに成功した。プルランエステル誘導体は非常に優れた光学特性を、セルロースエステルでは酵素分解性制御など、これまでにない様々なすぐれた知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)非可食系バイオマスからの新規バイオマスプラスチックの創製では、ヘミセルロース及び天然多糖類の化学修飾による新規プラスチックの創製に加え、グルコースから生合成されるグルカル酸関連物質からの新規プラスチックの創製と、農産廃棄物抽出成分を用いた含芳香族プラスチックの創製を行う。さらに、分子伸長剤や架橋剤を用いた高分子量および高耐熱性プラスチックの創製行う。 (2)バイオマスプラスチックの構造制御による高性能化 上記で合成した新規なバイオベースポリマーを用いて、新規成形加工技術の開発による高性能部材化と構造解析を行う。さらに、大型放射光を用いて、分子鎖構造および高次構造制御による高性能部材化に関する研究を遂行する。
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