研究課題/領域番号 |
26248049
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
大野 弘幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00176968)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / 高分子 / ゲル / 温度応答 / 水和 / 脱水和 |
研究実績の概要 |
親疎水バランスを適切に設計したイオン液体を水と混合すると、昇温により相分離し、冷却により相溶するという極めて珍しい相挙動を示すことを見出し、集中して研究を推進している。重合基を導入したイオン液体でもこのような挙動を示す例を見つけている。また、重合前後で相転移温度が変化することも見出している。このようなイオン液体を高分子化し、温度変化に応じて高分子化イオン液体に束縛される水分子数の可逆的な変化を詳細に解析することを目的としている。 平成27年度では高分子ゲル化させたイオン液体について、純水中での可逆的な水分子の束縛⇔解放を追跡し、温度変化に応じた水の吸脱着を行わせることに成功した。さらに、このゲルを塩化ナトリウム水溶液(人工海水)に浸漬し、可逆的な水分子の束縛⇔解放挙動に及ぼす塩濃度の影響を精査した。塩濃度の上昇により、水を解放する転移温度は低下し、より低温で収縮するゲルが得られた。また、より親水性のイオン液体を高分子化すれば、この転移温度を上昇させられることも定量的に追跡できたので、塩濃度に応じて目的の温度で相転移する高分子ゲルを作製するためのプロトコルを得た。有機イオン上のアルキル鎖長のみの制御では精度の高い新疎水バランスの制御は難しいが、新疎水性の異なるモノマーの共重合により目的の相転移挙動を示す高分子化イオン液体ゲルを得ることができた。 さらに浸透圧差の観点から考察すると、海水の塩濃度は約600mmol/L であり、これよりも低いイオン密度を持つ高分子ゲルには、浸透圧差に沿って水分子が入ってくることは無いため、式量の小さいイオンを使って高イオン密度の環境を作製することが課題となった。これについては28年度で推進することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに研究を推進することができた。また、高分子化により水和状態がモノマーのイオン液体と異なることや、塩濃度によって転移温度がシフトすることなどを整理でき、目的に合致した温度で相転移するイオン液体高分子ゲルを得る方法論を確立できたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにこのような水和状態が温度で大きく変わる物質が無かったため、様々な方面への展開が期待される。そのため基礎知見の集積が一段と重要になってきた。そこで、今後も親疎水バランスを適切に設計されたイオン液体の合成と高分子化を継続し、温度による水和状態の大きな変化について基礎知見を集積する。水の吸脱着だけでなく、溶存する金属イオンの吸脱着や、有用物質の濃縮、タンパク質の親和性の制御など、関連する様々な課題について精力的に研究を進める。
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備考 |
研究室web page: http://web.tuat.ac.jp/~ohno/index.html
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