研究課題
低残留磁場測定槽に逆光電子分光装置ならびに低速電子線回折装置を組み込んだ。装置構築と並行して、シンクロトロン放射光施設を利用した実験等により有機薄膜界面の電子状態研究について、以下の成果を得た。<表面を反応場とした有機金属錯体反応と電荷移動制御>投稿準備中金属基板上に有機分子が吸着すると、強い相互作用により空準位へ電荷移動が生じるが、その機構はまだ理解されていない。遷移金属フタロシアニン分子は中心金属の配位子場に応じて電子状態が異なり、電子軌道の束縛エネルギーのみならず空間的分布を操作することができる。走査プローブ顕微鏡と電子線回折による二次元構造、X線定在波分光による吸着高さの定量決定、内殻励起光電子分光および角度分解紫外光電子分光による電子状態測定を多角的に組みあわせることで、金属表面を反応場とした電荷移動現象の検証に成功した。5グループ国際共同研究である。<弱い相互作用系における電子構造変調の実験検証>一部発表済・他準備中ファンデルワールス力を基本とした弱い相互作用による電子状態の変化は、物性発現とその制御に対して非常に重要であるが実験的検証が極めて困難である。C60単結晶を試料として紫外光電子分光実験にはじめて成功し、バンド状態密度の定量的な評価を行った。またパイ共役系有機半導体DBP分子について、膜成長構造の精密な測定と構造解析を行い論文報告した。電子状態についての論文を準備中である。
2: おおむね順調に進展している
装置の移設作業および真空装置の立ち上げ作業がやや遅れたため、当初計画の電荷輸送機構の解明にむけた「分子軌道の自由度とエネルギー」へのリンクづけが難航している。それ以外の電荷移動や電子準位接合実験について補足データの取得は順調に進行しており、研究全体の進捗状況は問題ない。
電子準位接合解明について、逆光電子分光実験装置の調整を進め、構造規定された同一試料について価電子帯と伝導帯の知見を得る。電荷輸送機構の解明について、配向単分子層結晶膜を作製し、運動エネルギーに依存した振動結合状態の測定のため、高精度角度分解光電子分光実験を進める。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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