研究課題/領域番号 |
26249002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澁谷 陽二 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70206150)
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研究分担者 |
田中 展 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70550143)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造力学 / 構造体ネットワーク / 有限変位 / 非局所性 / サイズ効果 |
研究実績の概要 |
有限変位非局所化非線形構造体力学の枠組みには,2つの非線形性が含まれている.1次元部材や2次元部材では回転に伴い剛体的変形が増大し,部材に生じるひずみが微小でも非線形性を生じさせる有限変位となる(この意味で,ここでは有限ひずみを意図する“有限変形”とは区別している).この非線形性の取り扱いについて,研究分担者(田中)が研究協力者(南)とともに,弧長法を用いた数値計算の安定性を高めた剛性マトリクス法により定式化と解析を実施した.もう一つの材料非線形性であるが,一般に軽量化を極めた部材の変形は曲げ支配となり,変形の自由度として変位ベクトルとともに回転角ベクトル(たわみ角)を持つ.前者からは通常のひずみテンソル,後者からは曲率テンソルが定義される.これらの運動学的量に対して,系全体のひずみエネルギーを2次形式で定義し,変分原理に基づきひずみエネルギー関数から構成関係式を導出した.その結果,通常の弾性定数テンソルに加えて非局所化弾性定数テンソルが得られ,これは一般には計測が困難な材料特性値となる.数値解析のスキームとして,この有限変位非局所化非線形構造体力学の定式化を組み入れた有限要素解析手法を完成させた.そして,弧長法を用いた剛性マトリクス法に基づく解析から変形モード分類に基づく多様な変形パターンを予測し,その構造を持つ模型の試作を開始した.理論枠全体の構築に関しては研究代表者(澁谷)が主として実施し,数値解析手法の確立と解析の実施ならびに試作には研究分担者(田中)と研究協力者(南,岩田)が担当した. また,従来より提案されている異方性弾性定数の計測手法の中から超音波共鳴法の手法を試みとして用い,計測困難な非局所化弾性定数テンソルの推定を行った.この計測には,連携研究者(垂水)が担当した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画調書に記載した定式化を完成させて,ほぼ予定どおりに進展していることから上記の区分とした.経費支出内訳について,当初予定していた物品費の3Dプリンターは,研究分担者(田中)に関わる経費での購入との重複を避けるために購入を中止した.そして,非局所性の研究に必要なサイズ効果を持つ試料作製のために,集束イオンビーム加工観察装置を本科研期間中のリース契約により「その他」経費として支出した.このため,当初予定よりも「その他」の支出が増額となった.この装置により,10,000オーダーの範囲のサイズを持つ試料の組合せが可能になり,本研究の目的達成に大きく寄与する.
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今後の研究の推進方策 |
力学的サイズ効果を説明する上で,非局所性の特性が良く用いられる.その点を踏まえて.今後下記の2点について推進する予定である. [1]ミリスケールn配位構造体ネットワークの試作:すでに試作実施済みの4配位柔軟節構造体ネットワークを参照して,円筒形や組合せ構造等の3次元配置の構造体ネットワークを作成する.そして,構造不安定に伴う分岐モードの分類を行い,これ以外の新たな構造体ネットワークの探索を実施する. 実機モデルの製作において,柔軟節の具現化のための節構造設計が困難な場合には,極端な節(剛節や回転節)に限定して実験を行う予定である. [2]マイクロ・ナノスケール部材化構造体の試作: 中実円筒,中空四角柱といったマイクロ.ナノスケールの部材の試作のために,集束イオンビーム加工観察機によるマイクロ加工技術を用いる.この技術を利用して,種々の部材化構造体を試作し,単軸圧縮変形に伴う構造の不安定化(座屈)を調査する.特に,試料全体のサイズも可能な限り変化させて,内部構造の欠陥と構造体全体の変形との相関に着目したサイズ効果の検討を行う.
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