本年度は,当初予定の2項目と新たな1項目を実施し,最終年度としてのとりまとめを行った (1)ミリメートルスケールn配位構造体ネットワークの試作:既存の3Dプリンターを活用して,昨年度に引き続き負のポアソン比を持つ3次元構造体ネットワークを試作し,単軸の引張/圧縮試験を実施した. 一連の実験結果より,負のポアソン比の存在と変形に応じたポアソン比の変化が計測された.そして,節の回転を可視化し,その回転量の存在を確認したので,はり構造の非局所性と関連付けられる力学量が得られたことになる. (2)非局所均質化有限要素法の開発と有限変位への拡張:均質化有限要素解析の開発と,解の妥当性の検証を実施した.そして,その手法を用いて(1)で試作されたモデルの均質化弾性定数を求めることにより,サイズ効果と非局所性の特性を併せ持つ部材化構造体ネットワークを提案した.これらの結果から,いくつか新たな知見が以下のように得られた.(i)ミクロな構造に非局所性を保持しなくても,はり近似のマクロな構成式に非局所性を導入すれば,その存在を示すことができること.(ii)特性長さのオーダーはマイクロメートルスケールを持つこと.(iii)非局所性を増大すれば,負のポアソン比を持つ構造でもポアソン効果を消失させる特異な変形能を持たせることができること.(iv)微視構造セルのサイズの変化に応じた均質化弾性定数の結果より,非局所性の存在がサイズ効果をもたらす直接的な要因であることを確認した.これらは,非局所性の応用化に通じる大きな知見である. (3)ナノツインネットワーク構造のサイズ効果:純Mg材料の双晶境界がナノサイズで積層される原子構造体を提案し,分子動力学法によりその塑性変形におけるサイズ効果を調査した結果,ツイン間隔に応じた特徴的な欠陥挙動を得た.
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