研究課題/領域番号 |
26249032
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安岡 康一 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00272675)
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研究分担者 |
竹内 希 東京工業大学, 理工学研究科, 講師 (80467018)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマリアクタ / 促進酸化 / オゾン / 過酸化水素 / 気液混相 / 難分解有機物 / 随伴水 |
研究実績の概要 |
工場排水や資源開発では高濃度有機物を含む大量の汚染水が連続排出される。これらは難分解有機物のほか高濃度のイオンを含むため,従来手法である膜分離・触媒・微生物・プラズマ直接処理などでは処理能力に限界がある。本研究では大気圧プラズマを処理液と直接接触させ,気液界面反応により生ずるヒドロキシラジカルを大増産して高濃度有機物を分解するとともに,ヒドロキシラジカルが再結合してできる過酸化水素をオゾンによりヒドロキシラジカルに再生することにより,高濃度に難分解有機物を含む産業排水の完全無機化を革新的に高速化することを目的としている。 本年度は高速処理を実現する第一歩として1リットル規模のリアクタを完成させ,水中プラズマの生成数を従来の1個から21個と増加させるとともに,オゾン供給により促進酸化の大幅高速化を進めた。これにより先行基礎研究の20倍規模での有機物分解研究が可能となった。21個のプラズマ同時生成は,オシロスコープを用いたインバータ電源開発により成功した。また,廃液中に含まれる有機物総量を評価するため全有機体炭素(TOC)計を,オゾンガスの発生器およびインライン型オゾン濃度系を導入してオゾン/過酸化水素促進酸化の反応系を整えた。 以上によりオゾンでは分解不可能な酢酸を高濃度に含む水溶液を処理し,初期全有機炭素濃度(TOC)120 mgTOC/Lを120分でほぼ0にまで減少させることに成功した。また,酢酸分解過程で発生する副生成物の同定を進めたが,ギ酸,しゅう酸以外にも有機物が発生していることが炭素マスバランス評価により明らかとなった。現時点では不明物質の同定はできていない。さらに分解副生成物データを用いて気液プラズマ混相場でのラジカル反応モデルの検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,高濃度TOC(1,000mg/L程度)かつ高イオン濃度の排水1~10 Lを,短時間に無機化することを目標としており,先行研究での分解速度の10~100倍を考えている。このため(A)気泡内表面積極小化によるプラズマ反応面積の極大化,(B)プラズマ生成過酸化水素とオゾンとの反応制御によるヒドロキシラジカルの生成と有機物分解,(C)最適反応条件を見出すための気液プラズマ混相場でのラジカル反応モデル化を研究項目としている。 (A)については気泡形状制御による促進酸化反応への顕著な影響を見いだせていない。ただし,21並列プラズマのインバータ駆動に成功しており反応面積の増加を果たしている。 (B)については1リットル排水の無機化に成功した。流体制御を伴う反応場の最適化には至っていないが,完全無機化の見通しが得られた。 (C)については,分解副生成物の同定が困難な結果,分解反応速度定数が決定できていないものの,モデル化の基本方針を固めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により,高濃度難分解汚染水の革新的高速処理には,オゾン/過酸化水素による促進酸化処理が有効であることが分かってきた。このためヒドロキシラジカルの高効率生成の前に,ヒドロキシラジカルによる過酸化水素の大量生成を実現させることが有効であると判明した。このため,水中気泡内パルス酸素プラズマ方式に加えて,処理液中で大量に過酸化水素を生成する他の放電方式を取り入れる必要がある。なおこれには駆動回路も一体化して見直す必要がある。 また,難分解有機物とヒドロキシラジカルとの反応,ヒドロキシラジカルを生成する過酸化水素とオゾンとの反応条件を流体制御の観点から見直して,より高速に分解処理できるリアクタ構造を開発する必要がある。 モデル化に関しては,ますバランスを100%に保った条件で分解副生成物をマクロにとらえたモデル化とシミュレーション,反応最適化を優先させて行う必要がある。
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