研究課題/領域番号 |
26249037
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
角田 匡清 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80250702)
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研究分担者 |
末益 崇 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (40282339)
白井 正文 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (70221306)
古門 聡士 静岡大学, 工学研究科, 准教授 (50377719)
磯上 慎二 福島工業高等専門学校, 一般教科(物理科), 准教授 (10586853)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スピンエレクトロニクス / 磁性 / 先端磁性デバイス / 物性実験 / 物性理論 |
研究実績の概要 |
本研究は、大きな自発分極を有する強誘電体を絶縁障壁層とするFe4N基強磁性トンネル接合素子(MTJ)を開発し、電界効果が及ぼすFe4N薄膜の界面磁性の変調をトンネル磁気抵抗(TMR)効果ならびに電流誘起磁化反転現象を通じて明らかにすることを目的としている。 本年度は、昨年度に引き続き逆ペロブスカイト型遷移金属窒化物薄膜の磁性・磁気伝導特性の解明と、複合酸化物障壁層を有するFe4N基強磁性トンネル接合素子の開発について研究を行った。その結果、Fe4N薄膜で特徴的に現れる負の異方性磁気抵抗(AMR)効果の50K以下での低温異常が、同薄膜の異常ホール伝導率にも顕著に現れることを明らかとした。また、昨年度構築した結晶場効果を取り入れた電気伝導理論から予測された、50K以下の低温異常が(磁気的な)正方晶化に起因することが、本年度行ったtransverse-AMR効果の測定によって実証された。また、界面効果による磁性変調の検討を目的に行ったCoxMn4-xN薄膜の作製と磁気特性評価からは、Co濃度の増大に伴って、Mn4N薄膜の垂直磁気異方性が低下することが明らかとなった。また、Fe4N/Pt積層膜で観測される大きな逆スピンホール電圧が、プレーナーホール効果の影響を受けていないことを明らかとし、Fe4Nの特徴である負のスピン分極が影響している可能性が示唆された。 さらに、昨年度までに行ったRFスパッタ法によるスピネル(MgAl2O4)薄膜の強磁性電極薄膜上への堆積実験に加えて、自然酸化法による同薄膜の形成実験を行った結果、自然酸化法で作製したスピネル薄膜のトンネル抵抗がRFスパッタ法のそれよりも小さくなる一方で、TMR効果が失われ易くなることを見出した。これは、自然酸化法では、下部強磁性層界面の酸化防止がRFスパッタ法の場合よりも困難であるためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Fe4N基薄膜の磁性・磁気伝導特性の解明研究は概ね順調に進行している一方で、ペロブスカイト型酸化物トンネル障壁層薄膜の作製プロセスの開発、ならびに同障壁層を用いたFe4N基強磁性トンネル接合素子の開発・物性調査に進捗の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き逆ペロブスカイト型遷移金属窒化物薄膜の磁性・磁気伝導特性の解明ならびに高品質ペロブスカイト型酸化物強誘電体トンネル障壁層の開発を行う。 Fe4N薄膜の電流磁気効果に現れる50K以下での低温異常の原因究明に関する研究を実験・理論の両面から進めてゆく。また、(Fe-Ni)4N薄膜等の合成を行い、Fe4N基薄膜の界面効果による磁性変調の可能性検討の材料学的探索幅を広げる。また、Mn4N薄膜を強磁性電極に用いた強磁性トンネル接合膜(MTJ)の開発を行い、Fe4N薄膜を用いたそれとの比較から、界面効果がTMR効果に及ぼす影響について調査する。 ペロブスカイト型酸化物強誘電体薄膜の開発に関しては、引き続き複合酸化物トンネル障壁層の成膜手法の違いによるトンネル障壁層特性の変化を主に検討を行うと共に、SrTiO3, BaTiO3などのペロブスカイト酸化物単結晶基板上へのFe4N基ならびにMn4N基薄膜の形成実験を行い、MTJ作製時における問題点の抽出を行う。 これらの知見・技術を総合し、強誘電体障壁層を有するFe4N基強磁性トンネル接合薄膜を形成し、電界効果が及ぼすFe4N薄膜の界面磁性の変調をトンネル磁気抵抗効果ならびに電流誘起磁化反転現象を通じて明らかにしてゆく。
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