研究課題/領域番号 |
26249042
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩熊 成卓 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (30176531)
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研究分担者 |
川越 明史 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40315396)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超伝導 / YBCO / 交流損失 / 電流分流 / 並列導体 |
研究実績の概要 |
Y系超伝導線材は、結晶構造とその異方性に由来して形状は扁平なテープであり、従来の金属系低温超伝導線材において常套手段であった低交流損失化のための多芯化、大電流容量化のための撚線導体化の手法は適用できない。そのため、磁化による発生磁場の乱れ、交流損失ともに大きく、直流・交流用ともに容易に利用できない状況にある。本研究では、独自の概念に基づき、低Y系超伝導線材の低磁化・低交流損失化、大電流容量を図り、この基本的電磁特性の評価と解明を行って、低温超伝導多芯線・撚線導体に代わるY系高温超伝導線材・導体・巻線の構成法を明らかにすることを目的としている。平成28年度の研究実績の概要を以下に記す。 (1)レーザスクライビングによりフィラメント分割した短尺線材について、磁化・交流損失の温度、磁場、磁場印加角度依存性等を測定し、従来理論に照らして分割の効果を検証するとともに、中心到達磁界がフィラメント幅に比例しないながらも、無分割線材と同様に、Jc、交流損失の温度スケーリング則が成立することを検証した。 (2)分割・無分轄線材を小型テストコイルに巻き、直流電流・磁界を印加して、発生磁場を高精度磁場センサーで観測し、遮蔽電流の減衰時を記述しうる磁束クリープ理論を取り入れた理論表式を導出するとともに、遮蔽電流の低減、速やかな減衰を図りうる手法を提示した。 (3)分割・多芯化した線材をコイルに巻き、フィラメント間の電流分流を観測することにより、フィラメント間のIcのばらつきが電流分流にどのような影響を及ぼすのかを明らかにした。 (4)大電流容化のための転位並列導体において、Ic、n値がばらついた場合の素線間電流分流を数値解析により求め、交流運転下では最適転位により均流でも、直流運転下ではIcが小さいほど、n値が小さいほど、素線の電流が小さくなることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、ヘリウム資源枯渇が危惧される状況にあって、従来の金属系低温超伝導線材・導体の発展的代替手段となり得るY系超伝導線材・導体の開発を目指すものである。扁平なテープ形状を有するY系超伝導線材には、従来常套手段であった低交流損失化のための多芯線化、大電流容量化のための撚線導体化の手法は適用できない。本研究では独自の手法を導入してこの課題の克服を目指している。 低交流損失化については、スクライビング加工によるマルチフィラメント化とフィラメント間インダクタンスを均等にしうる特殊巻線工程の組み合わせにより、また、大電流容量化については、転位並列導体構造の採用により、両課題の同時解決を行う。これら低交流損失・大電流容量化手法の商用周波(高周波)帯域における適用性については、超伝導変圧器等の試作により検証した。しかし、筆者はむしろ直流応用(低周波)において解決すべき課題が山積していることを見いだし、本研究では、これら線材・導体を低周波から高周波に至るあらゆる応用に適応させうるように、課題の抽出と解決を目指している。 本研究では、まずY系線材の通常の電磁(Ic、交流損失)特性に加えて、磁化緩和(遮蔽電流の減衰)特性を観測してその基本特性を明らかにするとともに、小型テストコイルに巻き、発生磁場を観測して、線材・導体に誘起される遮蔽電流の減衰特性を観測し、独自技術であるスクライビングによる遮蔽電流の抑制および減衰の促進を確認した。さらに、通電途中の温度を調整することにより、より高速に遮蔽電流を減衰させる手法も提示した。すなわち直流応用上の問題点を見いだし、解決策を講じることにも成功した。また線材のフィラメント分割、転位並列導体化に際し、Ic、n値のばらつきが電流分流に与える影響についても定量的に解析し、今後、留意すべき点も明示した。よって、研究は計画以上に進捗している、と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに、今後も研究を遂行していく。 線材の電磁(ピンニング:臨界電流、交流損失)特性に起因する線材内遮蔽電流の減衰特性、大電流容量化を目指して転位並列導体を構成した際の素線間分流特性等々、Y系超伝導線材に特有の電磁現象を、独自の実験による観測と、理論的考察・数値計算による理論解析を駆使して、解明・把握することにより、従来の金属系超伝導線材・導体の発展的代替手段となり得るY系超伝導線材・導体の開発を目指す。
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