研究課題/領域番号 |
26249047
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
水本 哲弥 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00174045)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリコンフォトニクス / 直接接合 / 磁気光学ガーネット / 異種材料集積 / フォトニックルータ / 移相器 / 波長選択スイッチ |
研究実績の概要 |
光ルータを構成するために必要なシリコン光集積回路の開発を進め,光ルータ実現の基礎を構築することが本研究の目的である。光信号のルーティング処理に必要な要素デバイスの実現とこれを集積する技術の開拓を目指している。主な成果は、次のとおりである。 (1)波長変換器を構成する光アイソレータの温度無依存動作を実現するために,磁気光学材料Ce:YIGの屈折率及び磁気光学ファラデー回転係数の温度係数を測定によって明らかにした。さらに,その結果を用いて,20~60℃の温度範囲において重要な逆方向伝搬阻止特性が温度に依らず一定となるシリコン導波路形光アイソレータを実現した。今後は、半導体光増幅器の形成に必要な化合物半導体GaInAsPをSi上に接合した後に、光アイソレータに必要な磁気光学ガーネットを接合する技術を開拓する必要がある。 (2)マイクロリング共振器を合分波器として用い,熱光学マッハツェンダ干渉導波路形光スイッチを経路切り替えスイッチとして用いた波長選択スイッチの損失要因を明らかにした。さらに,挿入損失を低減するために適した新しい構造の波長選択スイッチ構造を考案した。マッハツェンダ干渉計の干渉導波路間を,マイクロリング共振器を介して特定の波長チャネルだけが結合する構造と1対の移相器を配置し,移相器のon/offによって所望の波長のみを経路選択する原理で動作する。今年度は,スイッチ特性を実現するために必要な要素部品の要求特性を明らかにした。今後,このスイッチを試作し,ルーティング処理に適した性能の実現を目指す。 (3)磁気光学ガーネット単結晶上にアモルファスシリコン導波路を形成し,これを用いて磁気光学導波路形光スイッチを実現した。この構造は,自己保持動作に発展可能なデバイス構造であり,ルータの経路選択時以外には制御用の電力消費を必要とせず,ルータの消費電力低減に有効である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたルーティング要素デバイスの基本的な特性実現と,性能改善についてほぼ順調に進捗している。特に、波長変換器を構成する際に必要な逆方向伝搬光を阻止する光アイソレータについて、これまで実現されていなかった温度無依存動作を実現し,熱発生源となる光能動デバイスと組み合わせて用いる光アイソレータにとって,重要な特性が実現できたと考える。 また、波長を選択して経路切替えを行う波長選択スイッチについても、挿入損失の低減と選択波長の経路選択動作の両立が可能なデバイス構造を見出すことができた。さらに,光信号の経路切り替えに必要な光スイッチについて,ルータの消費電力低減に有効な自己保持型光スイッチにつながる磁気光学光スイッチをアモルファスシリコン導波路で実現することができ,個別要素デバイスの開発について順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
波長変換器に適用するために、光アイソレータの挿入損失の低減を図る必要がある。磁気光学ガーネット材料のアニール処理による光吸収低減,導波路構造の最適化及び適切なクラッド層装荷によってこの課題の解決を図る。波長選択スイッチについては、挿入損失の低減が重要課題である。この課題を解決するための新しいデバイス構造について設計が完了している。今後は,これを製作し,on/off消光比を確保しつつ挿入損失を低減するよう製作結果を設計にフィードバックし検討を進める。また,経路切替え用の光スイッチについても,消光比及びスイッチ間の制御信号クロストーク(熱光学効果を用いる場合は熱的クロストークも含める)の低減を図り,自己保持動作についても検討を行う。 これら要素光デバイスの特性改善とともに,ルータを構成するために必要な種々の光デバイスに応じて必要な異種材料をシリコン光導波路上に集積する必要がある。異種材料を光回路上の局所に接合する方法についても研究を行い,光ルータに必要な光デバイスを集積しワンチップ光ルータを実現するための基礎を築く。
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