光ルータに必要な光信号処理回路を実現するために,必要な光デバイスをシリコン光回路上に実現し,光デバイス集積を検討することにより,ワンチップ光ルータ実現の基礎を確立することが本研究の目的である。本年度は,特に,波長選択スイッチ,経路切替え用光スイッチ等の光信号のルーティング機能の実現に必要な光デバイスの特性改善を進めた。 (1)波長選択スイッチ:複数の波長信号に対して波長ごとに経路を選択するスイッチ機能を実現するために,マッハツェンダ干渉導波路中に波長選択移相器を挿入する新規デバイス構造を考案した。このデバイス構造は,従来のリング共振器と熱光学スイッチを組み合わせた構成に比べて挿入損失を低減することができる点に特徴がある。波長1550 nm帯で動作するデバイスを製作し,低損失な波長選択スイッチ動作の実証に成功した。 (2)光スイッチ:光信号の経路切替えに用いる磁気光学スイッチの特性改善を進めた。その結果,波長1550 nmにおいて消光比11.7dBの特性を実現することができた。このスイッチは電流駆動で切替え経路を設定するが,磁気記録材料を組み合わせることによって,経路切替え時以外には外部駆動電力を必要としない自己保持動作が可能となり,光ルータの低消費電力化につながる。 (3)磁気光学デバイスの低損失化と光デバイス集積化:前年度までに特性改善を進めた光アイソレータについて,最後の課題となっている挿入損失の低減を検討した。その結果,シリコン導波路構造の工夫と磁気光学材料を必要とする部分を限定して局所的に磁気光学ガーネットを接合する方法を開拓し,低挿入損失化に成功した。これは,光ルータに必要な磁気光学デバイスを光回路上に集積化することを可能にする成果である。
|