研究課題/領域番号 |
26249054
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
寺井 弘高 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 上席研究員 (10359094)
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研究分担者 |
竹内 尚輝 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 特任教員(准教授) (00746472)
日高 睦夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門超伝導分光エレクトロニクスグループ, 招聘研究員 (20500672)
三木 茂人 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (30398424)
牧瀬 圭正 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究技術員 (60363321)
山下 太郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (60567254)
宮嶋 茂之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 研究員 (50708055)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 単一光子検出器 / 超伝導ディジタル回路 / 信号処理 / モノリシック集積化 / 超伝導検出器 |
研究実績の概要 |
H28年度は、光子が入射する毎にアドレス情報を出力するイベントドリブン型の64ピクセルSSPDアレイ用SFQ信号処理回路について、0.1W GM冷凍機に実装して試験を行い、正常動作を確認すると同時に、実際に64ピクセルSSPDアレイと接続し、光子の入射タイミングに併せてアドレス出力情報を読み出すことに成功した。 また、最終的な目標であるSSPDアレイとSFQ信号処理回路の実現に向けて、作製プロセスの検討を行った。実際に、16ピクセルおよび64ピクセルSSPDアレイをNICTで作製し、その後AISTで同一ウェハにSFQ多重化回路を作製・評価した。その結果、16ピクセルSSPDについてはSFQ多重化回路を含めて動作実証することに成功した。しかしながら、SSPDの光キャビティを構成するSiO誘電体層に、SFQ回路作製中の膜ストレスにより一部膜剥がれが生じ、その下部にあるNbTiN配線層がその後のエッチング工程で消失するという問題が発生した。そのため、アレイ全体での検出効率は通常のSSPDの1/100以下と低く、作製プロセス上の課題が残った。 一方、電流供給による冷凍機の温度上昇を抜本的に抑制するため取り組んでいる断熱型超伝導論理回路(AQFP: Adiabatic Quantum Flux Parametron)を使ったSSPDからの信号読み出しについては、SSPDとAQFP回路を直接接続して、SSPDからの出力信号を読み出すことに成功し、AQFP回路の動作中も回路を実装した0.1 W GM冷凍機のステージ温度が全く上昇しないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光子が入射する毎にアドレス情報を出力する64ピクセルSSPDアレイ用イベントドリブン型エンコーダー回路の0.1W GM冷凍機での動作実証に成功したことで、ほぼ同程度の回路規模になると予想される32x32=1024ピクセルSSPDアレイ用についても、0.1 W GM冷凍機でSFQ回路による極低温信号処理で動作実証できる目処がついた。また、最終的に目標としているSSPDアレイとSFQ信号処理回路のモノリシック集積化についても、現状ではSFQ回路作製時の膜ストレスによるSSPD配線層の膜剥がれ等により十分に高い検出効率を実証できていないが、作製プロセス上の課題を昨年度中に洗い出すことができたため、今後はそれらを1つ1つ解決していくことで、SFQ信号処理回路をモノリシックに集積化した大規模SSPDアレイチップの実現についても十分視野に入ってきたと考えている。 また、バイアス電流の抜本的な削減を可能とするAQFP回路においても、SSPDとAQFP回路を直接接続して、SSPDからの出力信号を読み出すことに成功し、AQFP回路の動作中も回路を実装した0.1 W GM冷凍機のステージ温度に全く上昇が見られないことを確認した。将来的な大規模アレイの実現に向けて、SFQ回路よりもさらに低消費電力なAQFP回路を信号処理回路として利用できる目処がついた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度設計・作製・評価を行ったモノリシック集積化チップにおいては、SFQ回路作製時の膜ストレスによるSSPD配線層の膜剥がれに起因してSSPDの検出効率が通常のSSPDに比べて著しく低かったという結果を受け、膜ストレスに対して耐性のあるSSPDの作製プロセスを検討し、16ピクセルSSPDアレイで高検出効率を実現すると同時に、高計数率、低ジッタでの動作実証を目指す。また、NxNピクセルのSSPDアレイから2N本の配線で信号を読み出すデバイス構造の検討をこれまで進めてきたが、本年度は実際に32x32ピクセルSSPDアレイのマスク設計・作製・評価を進める。すでに動作実証に成功している64ピクセルSSPDアレイ用イベントドリブン型エンコーダー回路とほぼ同じ規模の回路で、回路に一部変更を行うことで、32x32ピクセルSSPDアレイにも適用できるため、32x32ピクセルSSPDアレイ用の SFQ読み出し回路についても設計・評価を行う。 一方、SFQ回路への大電流供給にともなう発熱の影響を抜本的に解決することを目的に検討を進めているAGFP回路については、昨年度AQFP回路によるSSPDからの出力信号読み出しに成功したことを受け、本年度はAQFP回路によるSSPDからの信号読み出しについて、エラーレートや入力電流感度等、より詳細な評価を進める予定である。
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