研究課題/領域番号 |
26249060
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
服部 克巳 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60244513)
|
研究分担者 |
安川 博 愛知県立大学, 情報科学部, 名誉教授 (00305517)
鴨川 仁 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00329111)
山中 千博 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10230509)
酒井 英男 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (30134993)
内匠 逸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30188130)
園田 潤 仙台高等専門学校, 知能エレクトロニクス工学科, 教授 (30290696)
安藤 芳晃 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30323877)
高野 忠 日本大学, 理工学部, 教授 (80179465)
茂木 透 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80182161)
後藤 忠徳 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90303685)
井筒 潤 中部大学, 工学部, 准教授 (90362433)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ULF電磁場観測 / ELF電磁場観測 / MT観測 / 雑音除去 / Molchan Error Diagram解析 / 岩石室内実験 |
研究実績の概要 |
本研究では①複合観測システムとデータベースの構築、②データ解析法の確立、③房総半島の電気的地下構造の把握、④室内実験やモデルによる地震電磁場信号の物理機構解明、⑤電磁気学的、力学的、地震学的データとの関連性評価の5項目を連携させて実施した。具体的には房総等にてULF/ELF電磁場、海底磁場、大気電場等の複合観測点網を構築し、異常変動の有意性や普遍性・再現性を吟味し、その検出手法を確立し、観測学的/実証学的に地震電磁気現象の物理機構解明を目指した。成果は学術論文39件(査読あり19件、査読なし20件)、学会発表94件(うち国際会議39件、招待講演4件)であった。各項目の主な概要は次のとおりである。①複合観測システムおよびデータベースの構築:ULFとELF電磁気観測の複合観測点を房総半島に2箇所(清澄と旭)、長野に1箇所(松代)整備した。②データ解析法の確立:前年度に続き、信号弁別法や統計的評価法を開発した。③房総地域の電気的構造の把握:前年度に続き、房総南部で20箇所の電磁気探査を実施した。④室内実験モデルによる物理機構解明:斑レイ岩、花コウ岩、砂岩、玄武岩等を用い、圧力0-80MPa印加時に誘導される岩石分極と電流について、温度や含水率を変えて実験を行った。また、低周波電磁波について地殻中の微細構造の誤差を拡大せずに数値解析するConstrained Interpolation Profile法の3次元への拡張を行った。また下部電離圏の電子密度を監視するためにVLF帯大地-電離圏導波管伝搬を用いて同定する手法を開発した。さらに地震の断層ずれで生じる電磁波の伝搬特性を実際の地質モデルでシミュレーションする準備を行った。⑤電磁気学的、力学的、地震学的データとの関連性評価:b値解析や国土地理院のGEONETによる地震活動や地殻変動の状況も調査した。⑥その他:第2回地震準備過程に関する国際ワークショップを2015年5月29~30日に開催し、講演数37件、10ヶ国60人の参加があった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では①複合観測システムとデータベースの構築、②データ解析法の確立、③房総半島の電気的地下構造の把握、④室内実験やモデルによる地震電磁場信号の物理機構解明、⑤電磁気学的、力学的、地震学的データとの関連性評価の5項目を実施した。研究成果は学術論文39件(査読あり19件、査読なし20件)、学会発表94件(うち国際会議39件、招待講演4件)と順調といえる。特に①ではULF帯電磁波データとELF電磁場データ、大気電場やラドン等の地上複合観測点を房総の清澄と旭に設置した。また房総沖海底電磁場観測も別予算で房総slowslip域内外3箇所で実施した。②ではELFデータ中の背景雑音の推定分離法を検討し、有効性を計算機実験により確認した。また、2011年東北地震発生後の磁場変動を調査し、津波発生領域上部の電離層E領域およびF1領域に音波変動起源の電流が流れることがわかった。③では房総南部20箇所のMT探査を実施し、予察的な解析を行うともに、新しい雑音除去法の開発に着手した。④では岩石破壊実験では、火成岩中の間隙水が電流発生に重要であることがわかった(流動電位)。また、斑レイ岩を0℃未満に冷却すると、流動電位ではなく正孔電荷キャリアが検出された。また、計算機実験では低周波電磁波に対して、地殻中の微細構造の誤差を拡大せずに数値解析するConstrained Interpolation Profile法の3次元への拡張し、従来と比べ大きなセルサイズ比でも精度を落とさず計算できることを確認した。また、下部電離圏の電子密度状態をVLF帯大地-電離圏導波管伝搬を用いて同定する手法も開発した。⑤では地震活動データからb値分布の時空間変化およびGEONETデータより地殻変動の状況が監視できるようにした。⑥は2015年5月に国際ワークショップを開催し、情報の共有と今後の方向について議論できた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では①複合観測システムとデータベースの構築、②データ解析法の確立、③電気的な地下構造の把握、④室内実験やモデルによる地震電磁場信号の物理機構解明、⑤電磁気学的、力学的、地震学的データとの関連性評価の5項目を連携させて遂行する。具体的には房総地域等にてULF/ELF電磁場、海底電磁場、大気電場等の複合観測点網を構築し、異常変動の有意性や普遍性・再現性を吟味し、その検出手法を確立し、観測学的/実証学的に地震電磁気現象の物理機構解明を目指す。平成28年度は下記のように全項目に重点をおく。①複合観測システムとデータベースの構築:ULF電磁場観測点網の充実を推進する。ULF電磁場観測点を伊豆大島および旭-つくば間等に設置する。観測データ等のデータベース化をはかる。②データ解析法の確立:信号処理法や統計的評価法を開発する。具体的には(1)信号弁別:雑音除去法の検討、(2)時系列解析:波形解析による通常とは異なる波形の検知と分類、(3)統計解析:検定による異常診断やSEA(Super Epoch Analysis)等を用いた地殻変動との対応を時空間的に調査・検討 などを実施する。③電気的な地下構造の把握:前年度までに取得した約40箇所の地下構造探査データの解析を実施し、必要に応じて追加の電磁気探査を実施する。④室内実験やモデルによる地震電磁場信号の物理機構解明:岩石破壊実験や計算機シミュレーションを推進する。⑤電磁気学的、力学的、地震学的データとの関連性評価:地震データやGPS測地データ等と比較検討を行う。⑥その他:国際ワークショップを2016年5月に千葉で開催し、①から⑤の事項について共同研究者間の連携・相互理解や解析結果の評価等の情報共有をはかりながら研究を進める。
|