研究課題/領域番号 |
26249064
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上田 多門 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00151796)
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研究分担者 |
古内 仁 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60165462)
佐藤 靖彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60261327)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 補強設計 / 接着付着特性 / 接着工法 / 増厚工法 / 複合劣化 / 長期性能 |
研究実績の概要 |
(1)FRP接着工法の耐久性試験に関しては,国内外の企業による実務に適用されている6つのシステムの浸潤環境の影響を15ヶ月間の期間にわたり比較試験をし,接着・含浸樹脂は引張強度が少し低下するものがあること,せん断付着強度は,システムによって多少低下するものの,樹脂の引張強度とは密接な相関はなかった.せん断剥離破壊モードは,コンクリートの凝集破壊から,付着界面剥離破壊へと変わった. (2)セメント系増厚工法の耐久性試験に関しては,国内企業(2社)により実務に適用されている複数のシステムの温度の影響を1ヶ月間にわたり試験を行った結果,高温(60度)の影響は,1日で見られ,セメント系材料(PCM)の強度及び付着強度は顕著に低下する.試験時の温度を常温に下げると強度は回復する.破壊モードは付着界面剥離破壊からPCMの凝集破壊へと変わった. (3)FRP接着工法の剥離耐力向上技術開発に関しては,ポリウレア層を設けた炭素繊維シートとコンクリート間の付着特性に関する検討を行った.試験温度が60度以下であれば付着強度の低下が起こらないことを実験的に明らかにするとともに,実用的な有限要素解析用の付着モデルを構築した. (4)セメント系増厚工法の剥離耐力向上技術開発に関しては,下面増厚端部に設置するアンカー筋の長さおよび位置を変数として実験を行い,アンカーによる補強効果を確かめた.実験によって,増厚端部補強筋の引張力によって生じる割裂破壊面の局部曲げ応力の一部をアンカー筋が受け持つことが示された. (5)凍害と荷重による複合劣化に関しては,凍結融解繰り返し作用下のコンクリートの変形挙動のモデルを構築し,実験結果を推測できることを示した.また,荷重作用を合わせて受ける場合の変形や強度推定モデルの構築中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)接着工法と増厚工法の耐久性に関しては,予定とおり進捗しており,研究の成果も論文や国際会議などで公表している(公表決定のものを含む). (2)接着工法と増厚工法の剥離耐力向上技術に関しては,予定とおり進捗しており,研究の成果も国内外の会議で公表している. (3)複合劣化の推定モデルに関しても,予定とおり進捗しており,研究の成果を論文や国際会議において公表している.
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今後の研究の推進方策 |
(1)接着工法と増厚工法の耐久性に関しては,FRP接着工法の湿潤環境条件下の長期耐久性試験とPCM増厚工法の温度条件下の長期耐久性試験を平成27年度まで実施し区切りを付ける.なお,一部の供試体をさらに長期の耐久性試験用として残す.また,平成27年度と28年度を使い,年間の温度変化を想定した低温域(氷点下)から高温域(70℃程度)までの温度変化条件下の,接着付着界面とPCM・既設部コンクリートの長期耐久性試験を行う.FRP接着工法とPCM増厚工法の湿潤環境と温度の複合条件下の長期耐久性試験を平成28年度まで行なう.FRP接着工法とPCM増厚工法の荷重条件と湿潤環境条件との複合劣化条件下の長期耐久性試験を平成27年度に開始し,28年度まで実施する.荷重条件としては,持続荷重と疲労荷重を選び,荷重条件のみを与えた場合と湿潤環境条件との複合条件下の場合との比較を行なう. (2)セメント系増厚工法の剥離耐力向上技術開発に関しては,アンカーによる補強効果推定モデルの構築を実験的手法に基づき目指す. (3)複合劣化の推定モデルに関しては,メソスケールの統一モデルの拡張を引き続き行ない,凍害と疲労の複合劣化としての損傷シミュレーションが可能になるようにするとともに,損傷コンクリートのマクロスケールの材料特性モデル構築を平成28年度までに行なう.これにより,通常の数値解析手法(FEM解析手法等)を適用した,凍害と疲労の複合劣化を受けた増厚補強後のコンクリート床版の構造性能の予測を可能とする. (4)本研究の成果をも取り込むとともに,国内の最新の研究成果に基づき,セメント系増厚補強工法の指針を作成し,土木学会から刊行するための素案とする.
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