研究実績の概要 |
多種多様な最新の観測データを用いた推定が行われ,高詳細な地殻モデルが提案されている.一方で,地震外力生成過程(地震発生-地殻内地震波動伝播-地盤震動)・津波外力生成過程(地震発生-地殻変形-津波伝播)の評価では,その解析コストが莫大過ぎるため,このような高詳細モデルを用いた解析は行われておらず,簡単化されたモデルを用いて地震・津波外力想定が一般に行われている.本研究課題では,これを解決するための高速解法のコア技術の開発を行っている.解析を高速化することで,高詳細モデルを用いた多数回解析を可能とする.超高詳細モデルを用いることで現象をより正しく表現し,また,多数回解析することで多数シナリオやモデルの曖昧さを考慮した妥当な地震・津波外力想定が可能となり,合理的な被害軽減策提言に寄与出来ると期待される.本年度は,高詳細モデルを用いた有限要素モデルの構築手法の開発と高速解法のコア・アルゴリズムの開発を行った.具体的には,億自由度を超える有限要素地殻モデル構築手法の開発と解空間の粗密・演算空間の粗密を活用した高速ソルバーのひな型を開発した.マルチグリッドと精度混合演算を用いることで,効率的に解の候補を絞り込み,方程式の求解を可能としている.ヘテロコンピューティング環境での展開を前提に,疎な解を求める際に,それに適したマトリクスの保持方法を用いることとして,更なる高速実行を可能としている.また,ヘテロコンピューティング環境での実装を前に,ヘテロコンピューティングを念頭に大規模計算機環境でこのソルバーを実装し,億自由度を超える有限要素モデルを用いた実解析を行い,time-to-solution, scalability, peak performanceという計算効率の観点から有効性を確認した.
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