研究課題/領域番号 |
26249067
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清野 純史 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (00161597)
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研究分担者 |
宮島 昌克 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (70143881)
鈴木 崇伸 東洋大学, 理工学部, 教授 (50256773)
酒井 久和 法政大学, デザイン工学部, 教授 (00360371)
野津 厚 国立研究開発法人港湾空港技術研究所, 地震防災研究領域, 領域長 (60371770)
飛田 哲男 京都大学, 防災研究所, 准教授 (00346058)
小野 祐輔 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00346082)
鍬田 泰子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50379335)
古川 愛子 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00380585)
奥村 与志弘 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (80514124)
チャラトパングン ブッダ 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90750761)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 南海トラフ / 巨大地震津波 / 社会基盤施設 / 耐震安全性 / ライフライン / インフラシステム / ネットワーク / 強震動 |
研究実績の概要 |
2回の研究打ち合わせ会と1回の国際シンポを開催し、研究の推進に努めた。 本研究ではその目的を達成するために、継続的に以下の3つ、すなわち1)社会基盤施設の評価に適した入力地震動の合理的な設定、2)社会基盤施設の耐震・耐津波性能の評価、3)ネットワークとしての性能を考慮した効果的な対策の策定、に対する研究体制を敷き、研究を遂行している。 「南海トラフの入力地震動と津波モデル」に関しては、強震動パルスを含む長周期・長継続時間地震動をライフラインシステムに反映させるための方法論を展開・適用し、実務設計を念頭に置いた地震外力モデルを構築した。 「社会基盤施設の耐震/耐津波安全性評価」に関しては、液状化や地すべり現象に対してパラメトリックな3次元数値解析および模型実験を継続するとともに、道路・鉄道盛土や地中構造物の安全性評価のための基礎資料を集積した。鉄道橋梁については、旧式橋脚の耐震補強や対策法の提案を行った。津波に関しては、地震の揺れと同様に、被害を作用外力との関係で表現できるような指標を検討した。南海トラフ地震の際に津波被害を受ける可能性のある沿岸部の水道事業体へのアンケート調査結果を用いて、津波被害を行うとともに有効な対策について検討した。 「ネットワークとしての必要性能と安全性評価」に関しては、現行の設計基準に照らして十分な性能を持っていない通信地下施設を評価し、適切な対策を施すための研究を進めるとともに、水循環システムの耐震・耐津波安全性評価を行った。また、物資輸送のための緊急輸送路の被害の影響を定量的に検討し、来るべき南海トラフの大地震に対する復旧戦略のための基礎資料を策定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「南海トラフの入力地震動と津波モデル」に関しては、実務設計を念頭に置いた外力モデルを構築し、長周期・長継続時間地震動をライフラインシステムに反映させるための方法論を展開した。 「社会基盤施設の耐震/耐津波安全性評価」に関しては、インフラを支える様々な要素技術が完成に向かいつつある。通信設備では、現行の設計基準に照らして十分な性能を持っていない通信地下施設を評価し、適切な対策を施すための研究を進めた。建設後数十年が経過して劣化の進行も見られる中、膨大な地下施設をスクリーニングして効率的に評価するための条件を明確にした。構造物周辺の地中埋設管路については、周囲の地盤が液状化したときの地盤と管路の挙動に着目して研究を行っている。大型遠心力載荷装置を用いた模型振動台実験により、被災メカニズムの解明に資する成果が得られた。無筋コンクリート橋脚を有する在来鉄道の典型的な被害形態は、打ち継ぎ目での水平ずれと、その下側のコンクリートの剥落であるため、改良版個別要素法を用いて被災メカニズムを分析し、耐震対策の効果を検討した。また、粒子法に基づいた地すべりの数値シミュレーションを行うとともに、盛土斜面が地震によって崩壊した際に、その盛土中に埋設されていた管路に作用する荷重の特徴と被災のメカニズムを検討した。巨大津波に対する道路・鉄道盛土、鉄筋コンクリート建物への減災効果の検討を進めた。 「ネットワークとしての必要性能と安全性評価」に関しては、東日本大震災の震災報告書の文書からライフラインに関連する用語を抽出し、地震後のライフライン相互の関係について定量化することを試みた。また、水道に関しては、南海トラフ地震の際に津波被害を受ける可能性のある沿岸部の水道事業体へのアンケート調査結果を用いて、津波被害を行うとともに有効な対策について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえた今後の推進計画・方法は以下の通りである。 (1)「南海トラフの入力地震動と津波モデル」に関しては、これまでに検討した強震動パルスを含む長周期・長継続時間地震動とそれをライフラインシステムに反映させるための方法論を基に、社会基盤施設の総合的な安全性評価のための強震動予測手法を提示する。また、海溝型の巨大地震発生の前後に起こる内陸活断層地震に対しても、断層近傍の社会基盤施設の地震時挙動を適切に反映させた入力地震動モデルを提案する。 (2)「社会基盤施設の耐震/耐津波安全性評価」に関しては、これまで2次元/3次元数値解析および模型実験結果を基にして、地震動と津波の複合作用による社会基盤施設の安全性評価を行うとともに、社会基盤施設の津波安全性指標の開発と減災効果の検討を行う。また、道路・橋梁や上水道・通信・ガスなどのライフラインの地震時安全性に大きく影響する巨大地震時の自然斜面の安定性評価や道路盛土の安全性・安定性評価手法を構築する (3)「ネットワークとしての必要性能と安全性評価」に関しては、これまでの研究成果を基に、通信基盤設備の地震津波評価技術と効果的な対策の提案を行う。また、これまで行ってきたネットワークとしての必要性能と安全性評価に基づき、水循環システムの巨大地震・津波対策、および復旧性能を考慮したインフラシステムの地震・津波対策を包括的に提示する。2011年の東日本大震災では、ガソリンなど復旧・復興に欠かせない物資の供給が停滞したことが大問題となったが、これまで行った物資輸送の阻害要因の定量的評価に加え、その脆弱性を地震動と津波外力を同一指標で表現できる手法を策定する。 総括として、これまで国際的な視野に立った新たな研究シーズの導入と成果公表を図るべく、タイと台湾で開催した国際シンポジウムを本年度も開催する。
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