研究課題/領域番号 |
26249072
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山田 正 中央大学, 理工学部, 教授 (80111665)
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研究分担者 |
萬矢 敦啓 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員(移行) (00314740)
安田 浩保 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00399354)
藤田 一郎 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10127392)
山田 朋人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10554959)
清水 義彦 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (70178995)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 可能最大降雨量 / 極値統計理論 / 実河川の流量観測 / 河床波の力学機構 / 流出解析 / 画像解析 / 河床形態の変化 |
研究実績の概要 |
本研究では、流域一体に取扱う治水計画やリスクガバナンスの情報基盤が実現できる数理科学的な河川計画法を確立するため、<タスク-1>(:河川計画に不可欠な水文学と水理学の基盤概念の更新)と<タスク-2>(:経験的要素を排除した数理科学的な河川計画の確立)に大別して研究を遂行している。<タスク-1>は水文学的な研究項目、水理学的な研究項目に分類しており、<タスク-2>において<タスク-1>における各々の研究成果が相互作用的に結合することを念頭において、各研究者が研究を行っている。 平成28年度は平成27年度に引き続き、<タスク-1>の研究項目である、①可能最大降雨量に対応した極地統計理論の構築及び気候モデルを用いた水文学的な妥当性の検証、②実河川の流量観測に基づく小規模河床波の形状抵抗と流砂量への影響の推定を行った。具体的には、北海道や東北地方で被害がもたらされたような大規模出水時の基礎データを収集すべく、利根川八斗島基準点において洪水時の計測を実施した。そして、これらのデータを用いて平成27年度に構築した降雨の不確実性が下流の水位・流量へ及ぼす影響を数学的に示した理論的枠組みを拡張し、河道内の粗度係数等の物理量の不確実性の時間発展を示す新たな流出解析手法を提案した。さらに、カルマンフィルタ等の既存の洪水予測手法と比較して不確実性の拡散効果をより正確に表現できる洪水予測システムの基礎を構築した。また、<タスク-1>において得られた研究成果を基に<タスク-2>の研究項目である、「流域一体型解析に基づいた治水計画の立案」、「水害リスクガバナンスの情報プラットホームの拡張」、「観測実績が少ない河川向けの水位推算手法の構築」に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期間全体の後半である平成28年度は、<タスク-1>で挙げた研究項目を予定通り完了できた。可能最大降雨量に対する確率統計理論の確立と物理的妥当性の検証では、数理統計学における確率限界法検定を極値統計学へ応用し、本研究で対象とする規模の極値水文量を予測する理論的枠組を提案した。また平成28年度から開始した<タスク-2>についても順調に進めてきており、例えば流域一体型解析に基づいた治水計画の立案、及び水害リスクガバナンスの情報プラットホームの拡張では、鬼怒川の洪水による大規模な浸水被害を受けた茨城県常総市において平成27年度に実施した住民ヒアリング調査を基に、常総市住民の洪水時における避難に関する情報取得状況及び避難行動の実態について分析を行った。さらに、洪水氾濫シミュレーションによる洪水時の水の挙動と、ヒアリング調査で得られた住民の避難行動を動的に示し、洪水時の状況の再現を行った。また、実河川の流量観測に基づいた小規模河床形態がもたらす形状粗度の把握に関する研究では出水時の流量観測を前年度から引き続き行い、得られたデータの整理、及び解析を行った。さらに画像解析による河川流量計測や、流況と河床高の同時観測システムを構築し河床波の観測を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度に当たる平成29年度は、<タスク-1>において得られた研究成果を基に<タスク-2>の研究項目である経験的要素を排除した数理科学的な河川計画の確立を目指す。流域一体型解析に基づいた治水計画の立案、及び水害リスクガバナンスの情報プラットホームの拡張については、<タスク-1>で得られた降雨量や様々な物理量の不確実性を考慮した流出解析手法と、住民ヒアリング調査結果から明らかとなった住民の避難行動の不確実性を考慮したソフト対策の提案を行う予定である。また、実河川の流量観測に基づいた小規模河床形態がもたらす形状粗度の把握については、UAV(ドローン)や画像解析等の新たな河川流速計測技術や、流況河床高同時観測システムのような<タスク-1>で構築した手法やシステムを、平成28年度までに蓄積したデータや平成29年度に実施予定の洪水時観測に適用することでこの研究を達成する予定である。本研究で得られた様々な研究成果を有機的に結合することで、本研究の完了時には、既存の計画手法の欠落が抜本的に解消された、可能最大洪水規模の洪水に対応するとともに水文現象と水理現象の相互作用を考慮できる数理科学的な河川計画手法を確立できる見込みである。
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