研究課題/領域番号 |
26249073
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 綾子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80422195)
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研究分担者 |
谷口 守 筑波大学, システム情報系, 教授 (00212043)
井上 茂 東京医科大学, 医学部, 助教 (00349466)
市川 政雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20343098)
室町 泰徳 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40251350)
中原 慎二 帝京大学, 医学部, 准教授 (40265658)
白水 真理子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (60228939)
宮地 元彦 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部, 部長 (60229870)
久野 譜也 筑波大学, 体育系, 教授 (70242021)
藤井 聡 京都大学, 工学研究科, 教授 (80252469)
大森 宣暁 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (80323442)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 健康 / まち / モビリティ・マネジメント / 健幸 / 交通行動 / 行動変容 / 態度変容 |
研究実績の概要 |
平成28年度,29年度前半は,大和市における国民健康保険モビリティ/マネジメントと,市職員対象モビリティ・マネジメントの実験介入後の健康診断データを提供してもらい,2014年のデータとの比較分析を行った.さらに,交通行動データをアンケート調査により取得し,交通指標,健康指標の改善効果を分析した.その結果,バスや徒歩利用など身体活動量の増加につながる指標が改善するとともに,体重やBMIが減少すると言った健康指標の改善も示された.これらの結果より,都市交通担当部署と健康福祉部所が連携して開発・実施したモビリティ・マネジメントの有効性が確認された.この結果は土木計画学研究発表会(2017年6月)で発表済みである. また,初めてBMI指標が追加された2015年度全国都市交通特性調査(全国PT調査)データの提供を国土交通省都市局に依頼し,審査の結果入手することができた.これを用いて都市規模や交通行動とBMIとの関連を分析し,通勤手段がクルマ・バイク・タクシーの人はそうで無い人よりもBMIが有意に高いことが示された.また,徒歩可能距離とBMIについても,長距離を歩けると回答した人ほどBMIが低く健康的である一方,徒歩可能距離が100m以下の人はBMIが最も低いことが示された.徒歩可能距離が100m以下の人は,そもそも何らかの外出困難を抱えている人であることが示された. さらにベトナム国ハノイ市の大学生,大学職員,小学生保護者,企業従業員を対象として,モビリティ・マネジメントのフィージビリティ調査を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度,29年度前半は,地方自治体の都市交通と健康福祉の部署が一体となって進める交通施策の一つの可能性として,保健指導に交通行動変容を促すモビリティ・マネジメント(以下MM)プログラムを組み込み,その効果検証を行った.具体的には平成27年10月から平成28年3月の間に神奈川県大和市で,生活習慣病の予防対策として行われる国民健康保険特定保健指導の際に,事前アンケートを実施し,MMプログラムとして動機付け冊子など8種類のグッズを配布した.その後,平成28年10月に事後アンケートを郵送し、前後のアンケートに回答した41名を対象に、各交通手段の利用時間を前後で比較した.全体としてはバスの利用時間が統計的有意に,自転車の利用時間が有意傾向に増加した。目的別の分析では,社交・娯楽時のクルマ利用時間が有意に減少した一方で,バス・徒歩利用時間が有意に増加した.交通施策としてのMMは,健康福祉部署の健康増進施策としても,身体活動量の増加という観点で有効である. MMの効果は先進国では確認されているが,発展途上国ではMM実施可能性は不明である.本研究では発展途上国であるベトナムハノイ市を対象にMMのフィージビリティの把握、どの動機付け情報が効果的かの把握、新たな動機付け情報の作成を目的としてベトナムハノイ市の政府、企業、小学校、大学にアンケート調査を実施し,分析を行った。分析の結果、行動変容可能な層は約65%で本調査の対象者においてはMM手法が可能であることが示された。また、事故リスクと健康の動機付け情報が効果的であることが示された。新たな動機付け情報として「バイク依存だと子供が喘息になるかもしれない」「クルマ、バイクは太る」という情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は大和市における健康モビリティ・マネジメントの効果分析の精緻化,モビリティ・マネジメントの効果を最大化する要因分析等を進めていく.また,国土交通省の全国都市交通特性調査のみならず,厚生労働省所管の国民健康栄養調査と全国都市交通特性調査を組み合わせて,健康と交通行動の関連を包括的に分析していく.さらに,ハノイ市で実施したモビリティ・マネジメントのフィージビリティ調査をASEAN諸国の都市にも実施し,MM導入に適した時期や都市規模,公共交通インフラ整備状況等を把握したい.
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