研究課題/領域番号 |
26249075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐野 大輔 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80550368)
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研究分担者 |
大村 達夫 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30111248)
中込 治 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70143047)
木村 克輝 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10292054)
加藤 毅 群馬大学, その他部局等, 准教授 (40401236)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胃腸炎ウイルス / ノロウイルス / 糖鎖 / 相互作用 / ノロウイルス吸着性細菌 / 膜分離 |
研究実績の概要 |
本研究は、胃腸炎ウイルスと活性汚泥細菌由来糖鎖間の特異的相互作用に着目し、網羅的解析により得られたグライコミクス情報を活用することで、下水処理過程における全く新しい胃腸炎ウイルス制御方法を確立することを目的としている。研究2年目である平成27年度は、研究初年度に得られたノロウイルス粒子の糖鎖認識プロファイルをもとに、複数の遺伝子型のノロウイルス粒子の結合が認められたGD1aに着目し、GD1a陽性細菌を単離することを試みた。単離の際には、下水処理場から得られたサンプルを抗GD1a抗体及び蛍光標識二次抗体で処理後、セルソータに投入し蛍光標識された菌体を単離した。その結果、計256株が単離され、そのうち13株が実際にGD1aを保持していることがドットプロットにより明らかとなった。得られた13株から菌体外糖鎖を抽出してウェスタンブロッティングを行ったところ、3株からGD1aが検出された。この3株のうち2株はAeromonas属、1株はStenotrophomonas属であった。これらの結果は、非常に少数ではあるがGD1aを保持する細菌が環境中に存在することを示している。 また、これまでに得られている血液型決定抗原陽性細菌であるEnterobacter sp. SENG-6、及びリポ多糖中にB型抗原を有するEscherichia coli O86を用い、ノロウイルスの精密膜ろ過実験を行った。ノロウイルス粒子の直径は精密膜の孔径より十分に小さいため、精密膜による除去率は著しく低いが、Enterobacter sp. SENG-6共存した場合において除去率が有意に上昇した。またEscherichia coli O86に関しても、細胞外物質を除去しリポ多糖が露出した状態にしてノロウイルスと混合した場合において、ノロウイルス除去率が有意に上昇した。これらの結果は、ノロウイルス吸着性糖鎖である血液型決定抗原によりノロウイルスが菌体に捕捉されることで、精密膜ろ過による除去が可能であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、活性汚泥細菌由来の糖鎖との相互作用が下水処理過程におけるノロウイルスの除去効率に影響を与えていることを示すこと、及びノロウイルスの遺伝子型の違いによる糖鎖認識プロファイルの違いに焦点を当て、様々な活性汚泥細菌由来糖鎖を活用することで複数の遺伝子型のノロウイルスを効率的に除去することが可能であることを示すことを目的としている。研究2年目である平成27年度においては、特に1つ目の目的について、細菌が分泌する特定の糖鎖がノロウイルスの精密膜ろ過による除去に貢献することを示すことに成功した。この成果により、当初予定通りに研究最終年度の研究に取り組むことができることから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成28年度は、活性汚泥細菌由来糖鎖を活用して複数の遺伝子型のノロウイルスを効率的に除去することが可能であることを示す。具体的には、これまでに得られた血液型決定抗原陽性細菌及びGD1a陽性細菌を用いたベンチスケールの膜分離活性汚泥リアクターを構築し、安定同位体ラベリングを施したノロウイルス粒子を投入して、リアクター内のノロウイルス粒子の挙動を観察する。実験に用いる菌株は既に揃っており、ノロウイルス粒子の安定同位体ラベリングを達成すれば、すぐに実験を開始できる状況にある。
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