研究課題
高圧噴射装置による細菌細胞の損傷後の運命を明らかにするため、グラム陰性および陽性細菌としてEscherichia coliとBacillus subtilisを用い、細菌損傷試験を行った。細胞損傷を促進させる因子は高圧噴射装置の配管内の圧力であり、装置適用の繰り返し回数よりも細菌の損傷する割合は大きくなった。また、細胞損傷の程度はグラム陽性・陰性が有する細胞膜・細胞壁の構造の違いにより大きく異なり、グラム陽性細菌であるB. subtilisの損傷にはより多くのエネルギーを必要とすることが明らかになった。また、細菌損傷後の溶出成分を同定・定量したところ、トリプトファンとチロシンなどのアミノ酸を有する有機化合物が多く溶出することが明らかになった。次に、活性汚泥内に雑多に棲息する細菌が、細胞膜・細胞壁の構造に基づき高圧噴射装置により選択的に破壊されるかを検証するための試験を行った。活性汚泥を高圧噴射装置に適用させ、細胞破壊により溶出されるDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子に基づくアンプリコンシーケンスにより損傷した細菌を同定する新しい手法を開発した。この手法を用いることにより、高圧噴射装置の適用により細胞損傷もしくは非破壊の細菌群を同定することが可能になった。この結果、活性汚泥中のグラム陽性・陰性細菌の選別は起こらず、活性汚泥フロック内に存在する細菌の空間配置やその他の物理化学的特性等がトリガーとなって活性汚泥中の細菌の破壊が起こることが示唆された。高圧噴射装置の実用化に向け、高圧噴射装置の運転条件の検討を行った。また、槽容積2.3 m3のパイロット排水処理装置を設計・作製・改良し、平成27年度の実証試験に向けて実下水処理施設内に設置した。
2: おおむね順調に進展している
これまでの高圧噴射装置に関する基礎的検討とノウハウを活用することで遅延なく計画にしたがった成果を挙げることができた。
純粋菌株を用いた細胞破砕メカニズムと破砕細胞の可視化・定量化の確立を目指す。一方、より実用的な見聞を得るために、高圧噴射装置をパイロットスケールの嫌気・好気循環型活性汚泥法システムに導入し、実下水処理場内の下水を流入させた汚泥減容化試験を行う。これらの検討を並行して進めることにより、高圧噴射装置の物理・化学的細胞破砕メカニズム解明による基礎的知見を応用研究にフィードバックし、装置の実用化に向けた研究を推進させる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Biochemical Engineering Journal
巻: 100 ページ: 1-8
10.1016/j.bej.2015.03.022