研究課題
細胞破砕による余剰汚泥削減に向けた高圧ジェット装置の最適化に向け、細胞破砕のメカニズム解明に向けた基礎検討を行った。Escherichia coliとBacillus subtilisをグラム陰性・陽性細菌のモデルとして用い、高圧ジェット装置に適用し、細菌の破砕状況を原子間力顕微鏡によりシングルセルレベルで確認したところ、細胞壁・細胞膜の構造の違いにより、細胞破砕のパターンが2つの細菌群で大きく異なることを明らかにした。高圧ジェット装置による細胞破砕の要因となる、圧壊・摩擦・衝突のそれぞれの効果を検証するために、装置の改良を行った。改良した装置を用いて細菌破砕の評価を行ったところ、圧壊が細菌細胞の破砕にとって最も影響を及ぼす因子であることを実証した。活性汚泥を用いた高圧ジェット装置の微生物の選択的破砕が可能かどうかを、バルキングの要因となる糸状性細菌をターゲットとして評価を行った。高圧ジェット装置が糸状性細菌の破砕に効果を示し、活性汚泥の沈降性の向上に寄与する可能性を示唆した。高圧ジェット装置をパイロットスケールの循環式硝化脱窒法の排水処理システム(総容積2.3 m3)に組み込んで、活性汚泥の余剰汚泥減溶化効果の検証を行った。第一沈殿池後の下水をシステムに流入し、排水処理性能および汚泥生成量の評価を行ったところ、余剰汚泥の排出量を8割削減しても高圧ジェット装置を組み込まないコントロールのシステムと比較して、同等の汚泥沈降性および排水処理性能が得られることを示した。
2: おおむね順調に進展している
これまで蓄積した基礎的知見を最大限に利用することにより、計画通りに実験を進めることができた。
高圧ジェット装置を用いた活性汚泥の余剰汚泥減溶化の実用化を目指し、細胞破砕のメカニズム解明に基づく装置の最適化を行う。実験室規模の基礎的検討を通して知見を集積し、パイロットスケール試験へのフィードバックを図る。また、ファインバブルの形成や滞留による酸素富化に関する基礎的知見を得ることにより、細胞破砕以外の効果を明らかにする。さらに、高圧ジェット装置を組み込んだパイロットスケールの循環式硝化脱窒法の排水処理システムの長期安定性試験を実施し、実用化に向けた研究を推進させ、更なるスケールアップに向けた道標を示す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Biochemical Engineering Journal
巻: 100 ページ: 1-8
10.1016/j.bej.2015.03.022
巻: 101 ページ: 220-227
10.1016/j.bej.2015.05.019