研究課題/領域番号 |
26249082
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
甲谷 寿史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20243173)
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研究分担者 |
山中 俊夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80182575)
桃井 良尚 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40506870)
小林 知広 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90580952)
Lim Eunsu 東洋大学, 理工学部, 准教授 (50614624)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自然換気 / 実在建物 / 換気量測定 / 居住者評価 |
研究実績の概要 |
実在建物2件を例として、自然換気口での換気量測定法の開発に着手し、具体的に以下の3点を実施した。 1)実建物における換気量測定:実建物の自然換気口において長期の差圧による換気量測定を行った。実在建物においては、気密・水密を保つために外壁に貫通孔を開けることは容易でなく、また長期測定のためには、室内側も測定点位置が限られるため、単体の換気口に対して室内側の開閉ダンパー周辺と天井裏の差圧を用いることが現実的である。短期的に外壁面まで差圧チューブを通した正解値を測定しながら、同時に長期測定に耐えうる室内測定点での測定を行い、外部風向風速の異なる状況下での両者の差異を補正し、簡易な長期換気量測定法を提案した。また、別の建物1件では、トレーサガス減衰法を用いた換気量も行い、差圧測定による換気量と比較し、その差異を明らかにした。 2)自然換気時の煙突効果の検討:長期差圧測定結果の分析において、当初の予想に反し、高層建物特有の建物全体の煙突効果の影響が大きい可能性があることが明らかになった。よって、自然換気口の開放時と閉鎖時の建物全体の換気経路と煙突効果による換気量を特定するための各所の差圧測定を行った。併せて、室内の扉・開口部の気密性能測定を行った。結果、自然換気利用時期の外気温度下での煙突効果は、自然換気量に比して大きくないことが分かった。また、実在建物の扉・開口部の気密性能の実態を把握するとともに、現場測定法の開発を行った。 3)自然換気時の室内環境の検討:実在建物2件の自然換気の開閉の両条件下で、室内温湿度、CO2濃度を連続測定するとともに、同一の評価項目での居住者評価を得た。結果、自然換気利用時の温熱環境には問題ないこと、CO2濃度は劇的に低下すること、自然換気特有の時間変動や空間ムラに対する快適感が得られる可能性があること等の知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予想していなかった高層建物特有の建物全体の煙突効果の影響が大きい可能性が出てきたため、研究計画を再検討し、追加検討を行うよう当初計画を変更し、5ヶ月延長した、しかしながら、研究協力者としての学生を1名増加し、追加検討によって次年度に持ち込んだ検討と次年度計画を平行して実施したため、進捗上の問題は発生していない。追加検討により、建物全体の換気経路・換気量の特定方法に関して当初計画にはなかった新たな知見を得て、今後の研究計画を進めるにあたって、春季と秋季の年2回しかチャンスがない自然換気の測定での予期せぬ事態に対応できることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通り、これまでに着手した実在建物での換気量測定法の開発に関して、継続して以下の3点を実施すると共に、追加検討で得た知見を生かして4)の検討を行う。 1)差圧測定法の開発:多くの実建物で外周のほぼ全周にわたり自然換気口が設置される1フロアのオープンオフィスだけでなく、テナントが入居する小割り部屋においても、換気口での差圧測定を簡易測定手法として提案する。同時にポータブル温度計による換気口での空気温度を測定することで、外気の流出入判定を行い、換気経路を精度よく算定できると考える。 2)実在建物の室内換気量測定法の開発:多点の濃度同時測定によるトレーサガス法により室内の換気量を推定する手法を提案している。しかしながら、大空間での初期の一様混合状態の作成手法、換気量変動への対応など、実用に資するための種々の問題が明らかになっているため、発生点や測定点、換気量変動へ対応する時間間隔など、種々の検討が必要である。この測定では局所平均空気齢の測定が同時に可能となるが、局所平均空気齢を用いた換気性能評価の可能性も併せて探る。 3)実在建物の長期の換気量と室内環境測定による評価:差圧測定による換気量測定を行っている実在建物を対象として、そのデータ分析により差圧測定の問題点等を把握する。同時に室内環境測定と居住者評価を行うことで、室内環境が担保されているか否かを確認する。特に、これまで明らかになった自然換気によるCO2濃度の劇的な低下の効果に着目した検討を行う。 4)換気回路網計算による自然換気量同定:追加検討により換気回路網計算の入力条件を得たことから、BEMSの室温データを用いた自然換気量の同定手法の可能性を検討する。また、回路網計算による自然換気量の感度解析を行い、設計資料の提示にも取り組む。
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