研究課題/領域番号 |
26249088
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 剛久 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20220478)
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研究分担者 |
佐々木 勝寛 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00211938)
徳永 智春 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90467332)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SrTiO3 / 粒界 / 構造ユニット / HRTEM / STEM / FAST / FLASH / HAADF |
研究実績の概要 |
初年度は、全研究期間において最も基本となる実験項目である①セラミック双結晶の作製、②接合面への添加物蒸着と雰囲気制御のもとでの熱拡散接合、③新規双結晶接合炉の設計製作について行った。①については、SrTiO3[001]45°の回転角度を有する対称傾角粒界を作製した。この粒界の構造解析をHAADF-STEM/ABF-STEM法を用いて観察、解析を行った。その結果、粒界は直線状ではなく10-20nm程度の非常に細かいファッセット状であることを見いだした。この特有の構造については現在第一原理を用いた理論計算中である。②については、双結晶表面への添加物蒸着についてはMBE電気炉を設計から準備し、その調整を終了させた。③については、双結晶接合のための接合炉については設計が終了し、各部材を準備中である。 本研究の主たる目的である粒界構造ユニット構造と機能特性との相関性の解明について、新たな着眼点を見出した。これは、実用材料で極めて重要な動作中における構造ユニットの構造変化を、その場で計測するというものである。特に電子セラミック材料として用いられることの多いSrTiO3では、外部電場印加が非常に重要となる。この研究について、まず、電場を印加しながら昇温し、その後粒界構造にどのような変化が生じるかについて関連設備を整備し基礎的なデータ取得を行った。その結果、僅か100V/cmの電界で粒界の構造変化が生じることを見出した。今回使用した試料は多結晶体であり、その粒径は約1000nm程度である。これを考慮すると一つの粒界には約0.1V程度しか印加されていないこととなる。それにもかかわらず上記した構造変化が生じたこととなる。今後、この時に変化が生じた構造と変化が生じなかった構造との相違点に着目し、基礎データの蓄積を図り、構造ユニットの体系化へとつなげていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に策定した双結晶作製、そのための接合設備、ならびに、双結晶界面への添加材蒸着のための蒸着設備等、設計から作製までを予定通り終わらせることができた。一方、作製された双結晶の観察実験中に、本研究の構造ユニットの体系化に関する新たな研究指針の着想に至った。それは、設計された双結晶の構造からその機能を類推するのではなく、逆に、機能を有するために使用する外部刺激、例えば、外部電界に対して応答する構造ユニットを抽出するという指針である。これに関しても関連設備を整備し基礎的知見についの取得に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように基本的な研究指針に変更はないが、新たに着想した外部刺激に対する構造変化に着目した研究を次年度において取り組んでいく。本年度において、すでに僅か0.1V印加によって構造変化が生じることを見出している。しかしながら、この構造変化が全ての粒界において認められたわけではない。この変化が生じる粒界、変化が生じない粒界、とを系統的に整理し、解析していくことが、本研究の主たる目的である構造ユニットの体系化への最短経路であると判断できる。従来設定した研究については、順に研究を進めていくこととし、さらに、上記した外部刺激に対する粒界構造変化についても取り組んでいく。 支配的構造ユニットの系統的な抽出については、次年度も継続して行っていく。構造ユニットに関する系統的な基礎データを順次蓄積していき、そのデータをもとに、配位欠損性の少ない構造ユニット、および、大きく配位欠損している支配的構造ユニット形成の精査を行う。ドーパント添加ZnO双結晶については、当初予定されていたZnOではなく、SrTiO3に変更する。これは、上記した外部刺激応答実験との共通性を保つためである。
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