本研究では、種々の燃料電池中で最高の発電効率を示す固体酸化物形燃料電池(SOFC)のさらなる小型化、高出力化を目指して、積層型マイクロSOFCの開発を行った。昨年度までに割れ等の欠陥がなく理論開回路起電力を得る積層体の作製に成功し、さらに、電解質と高温で共焼結が可能な難焼結性カソードの開発を行った。今年度は、カソード材料のさらなる高性能化を図ると共に、多孔質電極とガス流路の最適化と多層化セルの作製に取り組み900℃において高い電力密度を得ることを目的とした。 難焼結性カソードの候補材料であるY0.6Sr0.4MnO3(YSM)およびY0.6Sr0.4Co0.2Mn0.8O3(YSCM)はPechini法により作製された。YSMおよびYSCMはLSMやLSCFに比べ電気伝導性は低いが熱膨張係数および難焼結性の観点では優れていた。1250℃以下の焼結では、YSMはLSMと同程度の分極抵抗を示し、かつ、より高い多孔度を維持した。積層型マイクロSOFCでは発電特性がガス拡散に律速されるため、YSMがLSMよりも高い電極特性を示すと予想される。しかし、焼結温度が1300℃ではYSMの分極抵抗はYSM/YSZ界面での絶縁層SrZrO3の生成により1桁程増加した。この対策としては化学的安定性が高いCe0.8Sm0.2O2やTiO2薄膜をYSZ-電極界面に挿入することが有効と考えられる。 多孔質電極の律速過程は3端子構成の複素インピーダンス法により解析され、アノード側のガス拡散抵抗が全体抵抗を支配していると理解された。アノード側のガス拡散抵抗が顕著な要因としては、水蒸気生成によるガス拡散の阻害が挙げられる。また、構造最適化により900℃で10 mW/cm2の電力密度を得た。さらに積層構造化はSOFC以外の電力変換・貯蔵デバイスにも有効と考えられた。
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