研究実績の概要 |
Ti-Zr-Nb-Mo-Sn-(O, N)系合金の集合組織および力学的特性の評価を行った。超弾性および低ヤング率を示すTi-Zr-Nb-Mo-Sn-(O, N)系合金を設計し、インゴットをアーク炉で溶解して作製した。圧延率90~98.5%冷間圧延を施した後、種々の条件で焼鈍処理を行い、再結晶集合組織の形成過程を調査した。特にTi-12Zr-6Nb-2Mo-2Sn-(O, N)合金を対象にし、酸素・窒素添加量および熱処理条件が再結晶集合組織の形成過程に及ぼす影響をXRDとEBSDを用い調査した。1.2O添加材を98.5%冷間加工後1173Kで熱処理すると、45sでβ相の再結晶粒が観察され始めた。α相は確認できず、{113}<471>方位の再結晶粒の割合が最も多かったが、同程度のサイズの{110}<001>方位粒、{110}<112>方位粒、{001}<110>方位粒も確認できた。その後、熱処理時間が長くなるにつれて{113}<471>方位粒が蚕食され、300s時点で{110}<001>、{110}<112>、{001}<110>方位粒が混合した組織を形成していた。一方、1.2N添加材では30s~45s熱処理でα相の析出が確認され、50sではβ相単相になり明確な再結晶粒が確認できた。50sでは粒径の小さく均一な{113}<471>方位粒の中に粗大化した{001}<110>方位粒が確認できた。55s以後に{001}<110>方位粒のみが大きく成長し、90sで非常に強いGoss集合組織を形成した。1173Kの熱処理で強い{110}<001>集合組織が形成しなかった1.2O添加材を923 Kで10min熱処理し、α相を形成した後、1173Kで熱処理すると、1.2N添加材と同様に{113}<471>方位粒の中に粗大化した{110}<001>方位粒が多く形成され、300s時点で非常に強い{110}<001>集合組織を形成した。以上の結果から熱処理初期におけるα相の有無が、強い{110}<001>集合組織の形成に重要な役割を果たすことが分かった。
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