研究課題/領域番号 |
26249110
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
若井 史博 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30293062)
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研究分担者 |
田中 諭 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20324006)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 焼結 / X線マイクロトモグラフィー / テープ成形 / スラリー / シミュレーション |
研究実績の概要 |
3次元可視化による成形プロセスの粒子充填構造と焼結の熱力学的駆動力の解明と制御を目指し、以下の成果を得た。 1)粒径150μmのガラス粒子のスラリーをテープ成形、乾燥した試料を焼結、X線マイクロトモグラフィーによる内部構造観察を繰り返し、焼結の進行とともに内部の微構造が変化する挙動を3次元で可視化した。微構造観察に基づき、相対密度より微視的な緻密化曲線を決定するとともに、比表面積、気孔表面の平均曲率を相対密度の関数として測定した。粘性焼結の力学解析より、緻密化の熱力学的駆動力である焼結応力を曲率法、エネルギー法、混合法の3つの方法で推定した。さらに、緻密化曲線より得られる緻密化速度と焼結応力より巨視的粘性係数を決定した。 2)アルミナの焼結時の不均一構造の形成について、x線マイクロトモグラフィを用いて、同一のサンプルの同一箇所を逐次観察して3次元可視化を行った。性質の異なるアルミナ原料顆粒を用いて成形体を作製し、脱脂後から焼結に至る過程、特に中期段階において、顆粒間および顆粒境界の三重点が、顆粒内の焼結と顆粒間の焼結に伴って数μmから約30μmの大きさまで拡大することを明らかにした。特に、成形用のバインダを含む顆粒は、成形性には優れるが、表面の偏析層が脱脂後に粗大欠陥形成の核となり、欠陥も粗大化する様子が明らかとなった。これにより粗大欠陥の抑止のための指針がえられる。 3)2つのガラス球粒子の粘性焼結の流体力学的な解析を行い、焼結の駆動力である焼結力を接触面の平均圧力と表面張力より定義でき、それがネック成長と関係することを数学的に証明する理論を確立した。2球粒子の3次元有限要素法シミュレーションを行い、焼結力とネック成長に関する理論的な予測が厳密に成立することを実証した。さらに、焼結力は2球粒子間距離の収縮をも決定していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2球粒子の粘性焼結モデルは1945年にFrenkel欠陥で有名なFrenkelによって提唱され、過去70年間、ネック成長と収縮に関する議論がなされてきた。今回、ネック成長と収縮の背後に焼結力が存在し、それが焼結挙動を支配していることを理論的に解明し、シミュレーションによって実証した。これは焼結理論における70年ぶりの大きな進歩であると考えている。さらに、膨大な粒子の関与する焼結現象は巨視的な緻密化曲線を用いて記述されてきたが、X線マイクロトモグラフィーによってミクロスケールの内部構造観察から直接緻密化曲線を決定するとともに、焼結現象を支配する焼結応力と巨視的粘性係数を相対密度の関数として決定できたことは、ミクロスケールとマクロスケールをつなぐものである。焼結過程に於いて、粗大欠陥の形成の原因を明らかにしたことは、セラミックス部品の強度の信頼性を向上するためのプロセス開発において重要な知見と成る。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度までに、X線マイクロトモグラフィーから等方的な焼結応力と巨視的粘性係数を決定する方法はほぼ確立した。次年度以降は、ミクロスケールでの粒子の運動をさらに詳細に解析し、微視的な収縮挙動の異方性と熱力学的駆動力の異方性の関係を明らかにする。さらに、複雑な微構造変化を定量的に記述するためのトポロジーならびに解析幾何学的な概念を提案することに挑戦したい。 これまでに顆粒を用いた乾式成形における不均一構造過程は明らかとなった。今後は、湿式成形におけるミクロとマクロの構造発達過程をx線マイクロトモグラフィ等を用いて3次元的に明らかにする。これまでわかりにくかった粗大欠陥形成原因を解明する。また、前年度に導入した機械的熱分析装置を用いて、焼結時の収縮の異方性におよぼす粒子形状や配向の影響を明らかにする。
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