研究課題/領域番号 |
26249116
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬越 大 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20311772)
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研究分担者 |
菅 恵嗣 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00709800)
岡本 行広 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (50503918)
塩盛 弘一郎 宮崎大学, 工学部, 准教授 (80235506)
島内 寿徳 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (10335383)
中村 秀美 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70198232)
林 啓太 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (10710783)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Membranome / 自己組織化膜 / ナノドメイン / 分子認識 / 光学分割 / LIPOzyme / ゲル / リポソーム |
研究実績の概要 |
本年度は,コアユニットであるリポソームの基本的な物性解析ならびに機能解明について重点的に研究を行った.各種蛍光プローブを活用してリポソーム表層ならびに疎水部の物理化学的な特性を俯瞰的に解析する手法を確立している(馬越/岡本/菅).また,非侵襲分析ならびに膜場の高感度解析を目的として,膜表面増強ラマン分光法,誘電分散解析にも精力的に取り組んだ.新規なリポソーム調製手法として,マイクロチャネル法や非溶媒超臨界法(中村/林)についても検討し,リン脂質を使わない新規ベシクル材料(島内/林)についても一定の成果が得られている. リポソームの機能に関して,膜表層を場とする(i)分子認識,(ii)変換反応に着目して研究を行った.(i)分子認識:ゲル相リポソーム(DPPC)はL-HisやL-Trpをキラル選択的に認識できることを明らかにした.さらに膜場を最適にデザインすることでICDH酵素やRibozymeの素反応プロセスを膜界面で制御できる可能性を報告した.(ii)膜表層を場とする変換反応:リポソーム膜場を活用することで,水溶媒では反応性の乏しい分子の変換反応を効率的に進行させる事を明らかにした.これら変換反応は,膜場の物理化学的な特性(膜流動性,膜極性,ミクロ相分離)の影響を強く受けることが明らかになりつつある. MoMシートについては,ハイドロゲル中に高濃度でリポソームを包埋させる手法を採用し,一定の成果が得られている.Polyacrylamideゲルの場合,リポソームを体積分率90%以上で固定化させることに成功しており,調製したゲルマトリックスがアミノ酸光学分割に応用可能である.リン脂質を包埋したCryoゲルについても開発が進んでおり(塩盛),NiPPAmゲルとリン脂質両方の相転移特性が反映されたゲルが得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は投稿論文19報(in press含む),国際会議8件,国内シンポジウム21件の成果報告を行っている.上述の通り,リポソームを始めとする自己組織化膜の特性解析についての体系的な方法論が確立され,目的に応じた膜場のデザインが可能となりつつある.リポソームは、膜場特性を制御することにより潜在的な各種機能を発現する機能性材料といえる例えばDPPCリポソームはゲル相状態をとることでL-アミノ酸の選択的吸着を達成したが,これは,ごく少量のL-アミノ酸吸着により膜表層の特性が変化したことに起因する.このことから,膜場の潜在機能を最大限に引き出すための膜デザインや外部操作が必要と考えられる.今後は動的な膜場特性の制御に伴う機能(アミノ酸認識など)制御について詳細に検討する必要があると考えられる. MoMシートの開発について,当初の研究計画で想定していた高濃度リポソーム包埋ハイドロゲルの調製に成功している.これら材料について,1)温度操作によってリポソーム相状態を制御できること,2)リポソーム包埋ハイドロゲルがラセミ溶液からL-アミノ酸を選択的に吸着することをそれぞれ明らかにしている.同様に,Cryoゲル材料についても,温度操作に伴う膜場特性の変化を確認している.以上より,実質的にMoMシートの基本形は完成していると考えられる.現時点での課題として,リポソームがintactに固定化されていない点が挙げられる.リポソーム膜特性と機能は密接に連動していると考えられ,MoMシートに意図したリポソーム機能を付与するためには,固定化方法の改善が期待される. 以上より,H27年度は概ね順調に研究が進展したと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として,原則,当初の計画通りに研究を行う. 【A班:馬越/塩盛/中村】各種MoMシートの調製とバルク物性の解析:H27 年度計画を継続しつつ,バルク物性の解析を進める.MoM シートの調製手法について最適化を行い,各種のバルク材物性(含水率,強度,弾性,もろさ,物質透過係数,ストレス応答性など)を解析する.田中豊一らと同様に,相平衡挙動を解析し,ポリマーから調製されるゲルとリポソームから調製されるゲルの類似性ならびに相違点を明らかにする.相図に基づいた上で, B 班が解析するナノ物性値を用いて,リポソームをコアユニットとした場合のMoMシートに最適なリポソーム表層デザイン手法を明らかにする.LIPOzyme シートを調製する.予め調製したLIPOzyme をマトリックス化する手法,あるいは,(b) 調製したリポソームシートに要素物質を取り込ませてLIPOzyme シート化する手法,何れについても検討する. 【B班/島内/菅/林】ナノ物性の解析:非侵襲性解析手法である 誘電分散解析法を用いて,MoM シートの表層物性を解析する.蛍光プローブ法も組み合わせながら,ポリマーマトリックスに囲まれた状態におけるリポソーム表層の物性値(流動性,表面電位,水和状態,不均一性(ミクロドメイン性)など)を解析し,特に,環境変動(状態変化,第三物質添加)条件下におけるMoM シートのナノ物性値の変動(ダイナミクス)を解析する.さらには,ストレス状態の変化履歴が,シート物性に与える影響について検討する. 【C班/岡本/馬越】プロセス選定のための第2 次ケーススタディ:高難易度のケーススタディを設定して,前年度に引き続き,ケーススタディ研究を行う.具体的には,タンパク質合成MoMe シート(工)ならびに抗酸化MoM シート(医)を考えている.H27年度と同様にプロセス化に際した問題点を見える化・データベース化する.
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