研究実績の概要 |
炭素―酸素結合の水素化分解反応は、酸素含有率が高いバイオマス資源を原料として付加価値の高い化成品を合成するプロセスにおいて重要な触媒反応である。一般に水素化分解反応は水素が用いられ、基質分子の高い極性・沸点のために水溶液を溶媒とするが、水素の溶媒への溶解度が高くないため高圧水素が必要とされる。本研究では、基質中に高い酸素含有率に着目し、高圧水素の代わりに、分子内水酸基の脱水素反応(-CH-OH→-C=O+プロトン+ハイドライド)から生成するプロトン及びハイドライドを用いた水素化分解反応を実現する触媒開発を目的とした。本年度は、植物油のエステル交換反応によりバイオディーゼル製造をする際の副生成物であるグリセリンを基質とし、外部水素を用いない水素化分解反応を行った。酸化レニウム修飾イリジウム触媒に対して、貴金属成分を導入した触媒を用いて反応を行ったところ、1,2-プロパンジオール及びアセトールが主生成物として観測され、外部水素がない条件でも水素化分解反応が進行していることがわかる。また、同時に、相対的に少量の二酸化炭素の生成も確認されていることを踏まえると、水素の供給は、脱水素反応と水相で進行する改質反応によっていることがわかる。水素化分解生成物の収率は、酸化レニウム修飾イリジウム触媒に対して導入する貴金属成分の種類や量に依存しており、白金が適していた。触媒組成の最適化及び反応条件の最適化の結果として、1,2-プロパンジオール+アセトールの合計収率として50%という高い収率を達成した。また、構造解析から白金はイリジウムと合金を掲載していることが示唆された。
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