研究課題/領域番号 |
26249127
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 史 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (40357661)
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研究分担者 |
加藤 義雄 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (20415657)
小林 健 独立行政法人産業技術総合研究所, 集積マイクロシステム研究センター, 研究チーム長 (20415681)
池袋 一典 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70251494)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / ナノニードルアレイ / アプタマー / オフターゲット効果 / 細胞操作 / 制御放出 |
研究実績の概要 |
本研究では、人工ヌクレアーゼを用いて目的遺伝子以外の部分に損傷を与えない安全で確実、高効率なゲノム編集技術を開発することを目的としている。平成26年度の研究では、細胞内に豊富に存在するATPを結合するATPアプタマーを用いた核酸分子スイッチを設計し、人工ヌクレアーゼであるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を細胞内で特異的に放出する手法の開発を試みた。in vitroの試験では、ATP濃度の上昇に伴うZFN放出が確認された。そこでATPアプタマー修飾ナノニードルアレイを用いて細胞へのZFN導入を行った結果、60分間挿入を維持しても全修飾量の2割程度しか放出されないことが判明した。細胞内の分子クラウディング環境を模擬するため、クラウディング剤を添加したin vitro試験を行った結果、ZFN放出がほとんど起こらないことが判明し、分子クラウディング環境ではATPが結合しない、あるいはATPアプタマーの構造転換が起こらないことが示唆された。 そこで、ナノニードルアレイ表面上に物質を吸着させ、挿入後にアレイ動作装置に具備されたピエゾパンタグラフを用いて高周波振動による加振を行うことにより、細胞内で吸着物質を放出する方法を検討した。プラスミドDNAあるいはCreリコンビナーゼを吸着したナノニードルアレイを細胞に導入した結果、プラスミドDNAの導入効率及びCreリコンビナーゼによる染色体組換え効率は、加振を行うことにより2倍以上に向上した。特にプラスミドDNAにおいては、これまで報告されてきたナノ針状材料を利用したプラスミドDNA導入効率が約3%であったのに対し、本方法では平均で34%と約10倍の導入効率を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アプタマーによる制御放出が困難であることが判明したが、同時に加振による物質放出法を開発し、高い導入効率を達成している。今またCreリコンビナーゼの導入によって、染色体の組み換えが可能であることを証明した。今後、人工ヌクレアーゼにこの手法を適用することによって導入量の制御されたゲノム編集が可能になると考えられる。また、ATPアプタマーでは方向な結果を得られなかったものの、人工ヌクレアーゼで最も良く用いられるヌクレアーゼFokIに対して結合するアプタマーのスクリーニングを開始しており、PBSで結合し、細胞内模擬緩衝液で放出される配列を選抜した結果、7種の配列の取得に成功している。このように、当初計画で困難であった点を見直し、良好な結果を得ており、計画はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
高周波加振によって人工ヌクレアーゼを導入する手法を開発する。使用する人工ヌクレアーゼにはZFNの他にCRISPR/Casを用いる。ZFNおよびCRISPR/Cas をナノニードルアレイ表面に吸着させる表面処理方法を最適化する。吸着条件を検討するためにGFP-ZFNまたは蛍光標識gRNA/Casを用い、in vitro、in vivoの放出試験を行う。HIVの感染に必須のCCR5遺伝子の破壊を指標にゲノム編集効率を算出する。またオフターゲットの割合を同時に算出し、従来法のプラスミドベクターを用いる方法と比較してオフターゲット効果の低減が可能であったかどうかを評価する。 また取得されたFokIアプタマーを用いて、ナノニードルアレイからの放出を確認する。良好な放出が可能であった場合は、ZFNを用いた導入試験を行う。
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