研究課題/領域番号 |
26249131
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小木曽 望 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70295715)
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研究分担者 |
田中 宏明 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 准教授 (90532002)
岩佐 貴史 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90450717)
秋田 剛 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (20405343)
池田 忠繁 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40273271)
坂本 啓 東京工業大学, 工学院, 准教授 (40516001)
仙場 淳彦 名城大学, 理工学部, 准教授 (60432019)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / スマート構造システム / 不確定性 / 高精度画像計測 / 最適設計 / データ同化 |
研究実績の概要 |
計算検証と実験検証の統合に向けて「C. 計算機検証と試験検証との融合」における「C1. 不確定性モデルの改善と最適設計法の再構築」,「C2. 大型モデルの設計と計算機検証」に取り組んだ.ここでは,不確定性を考慮した最適設計問題を,主鏡の変形に対応する副鏡アクチュエータの最適配置,変位拡大機構の最適設計に適用し,スマート構造が有効となる変形モードの抽出を行うとともに最適設計解に対する不確定性の影響を定量的に評価した.さらに,変位拡大機構の計測実験を通して設計解の妥当性を評価するとともに,設計モデルにおける問題点を明確にした. 計算機検証として,「A. 計算機検証法の構築」では,「A1.スマート材料・複合材料の不確定性定量化モデルの改良」,「A4. 不確定性を統合した解析モデル更新法」に取り組んだ.A1では,CFRP擬似等方積層リフレクタの面外熱変形における繊維配向角の影響を適切に低減できるアクチュエータ配置を求めた.また,情報量の不確定性を考慮した不確定性モデルを新たに提案した.A4では,構造の結合部や支持部における接触状態の不確定性を考慮した熱伝達解析や,振動解析,また摩擦の不確定性を考慮した場合の柔軟部材の形状再現性など,データ同化法の高精度化に取り組み,更新法の改良を行った. 「B. 試験検証の構築」としては「B4. 高精度スマート構造プロトタイプ」に取り組んだ.A1と関連して,CFRP製リフレクタにおけるアクチュエータ配置の有効性を実験により検証した.さらに,大型モデルに適用できる画像計測法として27年度に構築した格子投影法を利用した結合計測法に対して,結合誤差の発生原因を特定するとともに,その改善策を構築し,1.5mパラボラアンテナの表面形状計測精度向上を達成した.また,熱変形の発生しにくい機構のプロトタイプを製作し,設計の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画より進んでいるテーマと計画より遅れているテーマとがあり,トータルとしては計画通りと判断した.各テーマについては上記の「概要」に記したので,ここでは2件のテーマにつて成果および課題について述べる. 「A4. 不確定性を統合した解析モデル更新法」においては,スマート構造による形状補正が有効となる変形モードの見直しが必要となることを明らかにした.その変形モードを抑えるために,構造コンフィグレーションの変更とアクチュエータによる補正のどちらが有効かを見極めた上で,アクチュエータ最適配置を新たに行うことにして,不確定性に対するモデル更新法の有効性を確立する. また,新たな課題として統計的不確定性を考慮することとした.これはサンプル数の不足や確率モデルへの当てはめにおける誤差であり,荷重や材料特性の変動である物理的な不確定性とは性質が異なる.この不確定性がどう影響するかを見極める必要がある. 「B4. 高精度スマート構造プロトタイプ」については,当初考慮していたスマート副鏡だけでなく,CFRPリフレクターや1.5m主鏡試作モデルなども対象として検討を進めている. 「B4. 高精度スマート構造プロトタイプ」として.温度変化にロバストなスマート構造用駆動機構として,異種金属を組み合わせる手法を提案し,数値解析モデルにより設計の有効性を確認したのちにプロトタイプを試作し,実験による評価を通して,その有効性を示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため,計算機実証と実験実証の融合に向けて,「C2. 大型モデルの設計と計算機検証」,「C3. 大型モデルの部分評価による検証」に取り組む.部分評価モデルとして,CFRPリフレクター,スマート副鏡および1.5mの主鏡試作モデルを考える.CFRPリフレクターに対しては,これまでの成果をもとに擬似等方積層からなるリフレクターの熱変形に対する不確定性検証に加え,積層構成を変更したモデルを作成し,積層構成におけるバラツキが性能におよぼす影響を評価する.スマート副鏡においては,これまでに最適設計で求めたアクチュエータ配置を実験検証する.主鏡試作モデルでは,形状誤差に対する誤差補正能力の検証と同時に画像計測のの誤差評価を合わせたモデル構築につなげる. また,これまでの研究から,新たに課題が見つかった「A4. 不確定性を統合した解析モデル更新法」に取り組む.ここでは,平成28年度の研究より明らかになったスマート構造による形状補正が有効となる変形モードの見直しを行った上で,アクチュエータ最適配置を新たに行う.そして,不確定性に対するモデル更新法の有効性を確立する.また,当初の研究予定には含まれていなかったけれど,物理的な不確定性だけでなく,情報量の不確定性を考慮することの重要性が明らかになったことから,その検討も進めることとする. さらに,4年間の研究活動を総括するとともに,この研究で構築した「計算機検証と試験検証とを融合した設計検証法」を,今後の宇宙構造として必要となる高精度宇宙スマート構造の設計に活かすための展開計画を構築する.
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