研究課題
現場観測と実証実験については、平成26年度に制作した6GHz可搬型マイクロ波放射計(PMR)を用い、既存の18GHzや36GHzの可搬型PMRとともに低温室実験、砕氷船上観測、屋外実験を実施し、6GHzと36GHzを使用した海氷厚アルゴリズムの検証と18GHzを使用した海氷上の積雪深アルゴリズムの開発に取り組んだ。これまでの実験・観測から、6GHzは海氷表面の違いに最も敏感であり、塩分の低下に伴って輝度温度上昇する傾向が確認された。18GHzは積雪量の変化に敏感で、積雪の増加とともに輝度温度が下降した。ただし、輝度温度の絶対値は雪氷温度の違いによって大きく変化することに注意する必要がある。衛星リモートセンシングについては、マイクロ波放射計データから計算した海氷漂流速度データセットを整備し、数値モデルへの同化をはじめた。また、海氷厚の変動メカニズムについて解析をすすめ、冬季から春季にかけての期間では海氷の動きに伴う変形により、海氷厚が大きく変化することがわかった。本課題で改良中のアルゴリズムを用いてマイクロ波放射計データから算出した冬季の海氷厚と、その後の海氷の動きの双方を用いることにより、より信頼度の高い海氷厚データセットの作成を目指した解析をはじめた。数値モデルの高精度化については、北極海でのラジオゾンデ観測データを整備し、そのデータを初期値化に考慮した場合と考慮しない場合の大気予測データを高解像度海氷海洋結合モデルの境界条件に与えて、海氷分布に与える影響を定量的に調べた。また、人工衛星による海氷観測データを、北極海全域の海氷海洋結合モデルに同化させ、その効果を検証した。その結果、例えば海氷密接度を同化させると、同化していない海氷厚や海氷漂流速度も改善されるなど、データ同化の効果が明確に見られた。
1: 当初の計画以上に進展している
現場観測と実証実験については、平成26年度にマイクロ波放射計の納入遅れの問題があったが、平成27年度は実験・観測を精力的に行い、遅れを取り戻すことができた。衛星リモートセンシング観測については、作成したデータセットの数値モデルでの利用が可能になり、海氷厚変動メカニズムの解析も順調にすすんでいる。数値モデル研究については、大気データの精度向上による海氷予測精度の向上が確認された。また、世界的にも実施例の殆ど無い、海氷観測データの海氷海洋結合モデルへの同化手法を検討・開発し、その効果が顕著であることを確認できた。これらの結果は、来年度実施する高解像度領域モデルによる海氷高度予測の研究に生かされる。以上総合して、研究計画は順調に進展していると言える。
現場観測と実証実験については、平成28年度は観測データの解析と衛星データへの応用、数値モデルとの融合に重点を置き、実験については不足分を補うための低温室と冬期の屋上実験・サロマ湖観測のみ行う。衛星リモートセンシング観測研究については、現時点で作成可能なもっとも信頼度の高い海氷厚データセットの作成を目指し、数値モデル研究と協力しながら研究をすすめる。数値モデル研究については、海洋側の表層にまだ熱塩バイアス誤差が見られるため、引き続き、その改善に取り組む。データ同化に関しては、本年度の検討を基に、初期値化手法の改善を行なった上で、各国の気象予測データを用いた短期予測実験を行なう。また、高解像領域モデルのへデータ同化を行なう。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 9件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 19件、 招待講演 8件) 図書 (3件)
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