研究課題/領域番号 |
26249133
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20166622)
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研究分担者 |
羽角 博康 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (40311641)
小野 純 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, 特任研究員 (20451411)
舘山 一孝 北見工業大学, 工学部, 准教授 (30374789)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 北極海 / 海氷予測 / 現場観測 / 衛星リモートセンシング / 数値モデル / マイクロ波放射計 / 海氷漂流速度 / データ同化 |
研究実績の概要 |
衛星搭載マイクロ波放射計AMSR-Eから推定した夏季の海氷厚にはこれまで海氷融解による顕著な誤差が現れていた。今年度はAMSR-Eを用いた夏季海氷の融解度判定手法を確立し(Tanaka et al., 2016),客観解析データと衛星データを同化することで夏季推定氷厚の誤差を大幅に低減することに成功した。結氷期においても海氷厚の推定精度のさらなる向上を目指し、北見工業大学構内およびサロマ湖氷上で積雪測定実験を行い、6GHzと18GHzを使用した海氷上の積雪深アルゴリズムの開発とその改良に取り組んだ。 衛星リモートセンシングについては、マイクロ波放射計データから計算した海氷漂流速度の数値モデルへの同化をすすめた。また、マイクロ波放射計による観測データを用いた海氷厚の変動メカニズムについての解析をすすめるとともに、衛星搭載の光学センサーMODISによる可視画像を用いた4km解像度での海氷漂流速度導出にも成功した。 数値モデルについては、夏季は海氷密接度の持続性が、冬季はバレンツ海への海洋亜表層水の移流プロセスが、海氷面積偏差の予測精度に重要な役割を果たしていることを示した。また、理想的な状況の下で実施したモデル実験により、海氷厚の初期値化が数年先までの海氷予測精度に影響を与えることを確認した。人工衛星による海氷観測データを、海氷海洋結合モデルに同化させて海氷推定精度を向上させる研究を平成28年度に引き続き実施した。種々の同化手法、同化データ(海洋密接度、海氷厚、海氷漂流速度)の得失を明らかにした。加えて、高解像度モデルへのデータ同化研究も開始し、これまで精度の悪かった海氷成長期の予測精度が特に大きく向上し、他の季節と同レベルになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
衛星リモートセンシング観測については、可視画像を用いた高解像度での海氷漂流速度計算に成功し、海氷厚変動メカニズムの解析も順調にすすんでいる。衛星搭載マイクロ波放射計AMSR-Eによる融解期の海氷厚推定アルゴリズムの改良に成功し,AMSR-Eの後継機であるAMSR2への応用と積雪補正の取り組みは順調に進んでいる. 数値モデル研究については、夏季は海氷密接度の持続性が、冬季はバレンツ海への海洋亜表層水の移流プロセスが、海氷面積偏差の予測精度に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、中解像度モデルを用いて、海氷観測データの海氷海洋結合モデルへの同化手法を検討・開発した。さらにその成果を生かして、高解像度領域モデルに対するデータ同化の効果を示した。 以上総合して、研究計画は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現場観測と実証実験については、平成28年度に引き続き平成29年度も観測データの解析と衛星データへの応用、数値モデルとの融合に重点を置き、実験については冬期の屋上実験・サロマ湖観測で改良アルゴリズムの検証を行う。 衛星リモートセンシング観測研究については、高解像度の海氷漂流速度データセットを作成し、細かいスケールの現象が広域の海氷変動に及ぼす影響を把握するための解析をすすめる。 数値モデル研究については、海洋表層のバイアス低減および初期値化(同化)手法の改善を継続しながら、これまでの結果に基づいて海氷予測の精度を高める。データ同化研究については、これまで境界条件による誤差影響の少ない中解像度モデルでデータ同化手法及び同化するデータの効果を検討して来たが、その成果が得られたので、今後は高解像度モデルへのデータ同化研究に注力する。
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