研究課題/領域番号 |
26249136
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
後藤 浩二 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60274487)
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研究分担者 |
丹羽 敏男 国立研究開発法人 海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (10208267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 疲労 / 構造・材料力学 / 二軸載荷疲労 / 表面亀裂 |
研究実績の概要 |
船舶や海洋構造物に代表される大型溶接構造物が,a)二軸方向に載荷されかつ各載荷成分が位相差を有する問題,b)複数周波数成分を有する応力変動履歴が作用する問題,について研究代表者らがこれまでに構築した破壊力学的手法を発展的に適用することで,高精度に推定する手法の確立を目的としている.さらにc)これらの基礎となる亀裂結合力モデルに基づく疲労亀裂伝播シミュレーションの更なる改善,にも取り組んだ.今年度の成果要旨は以下通りである. a)平板に存在する半円形状の表面亀裂に同位相の二軸面内引張・圧縮荷重を作用させた疲労試験を実施し,亀裂形状成長履歴を測定した.この結果を過去に単軸載荷条件下で測定された亀裂形状成長履歴と比較し,二軸載荷でも単軸載荷と同様の形状変化を示すことを確認した.また,応力集中場に存在する疲労亀裂形状変化履歴の簡易推定式を提案した. 次に面外ガセット付二軸載荷試験体を用いた疲労試験(二軸載荷が同位相および逆位相)に関する亀裂成長シミュレーションを実施した.この際に昨年度X線回折法で測定した残留応力分布の影響を考慮している.逆位相載荷条件では比較的良好に亀裂成長履歴を推定したが,同位相載荷では危険側推定となった. b)現状の亀裂結合力モデルに基づく疲労亀裂伝播シミュレーションでは,載荷履歴中の圧縮載荷の程度が大きくなった場合に初期亀裂部分も閉口することが考慮できないため,この現象を表現できるようにシミュレーションプログラムの改良を行った. c)これまでの疲労亀裂伝播シミュレーションでは,表面亀裂問題を豊貞らによる等価分布応力の概念に基づいて板厚貫通亀裂問題に置き換え,間接的に亀裂成長履歴を評価していたが,表面亀裂問題を直接シミュレーションするために,表面亀裂問題に対する亀裂結合力モデルを構築し,弾塑性有限要素解析結果との比較により,同モデルの妥当性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
表面亀裂の成長履歴測定実験において,当初設定した初期欠陥では疲労亀裂の成長に想定外の時間を要した.そのため一旦実験を中断し,初期欠陥寸法を大きくする試験片再加工を行って実験を再開した.そのため,今年度は一載荷条件下でのデータを得るにとどまった. なお,数値シミュレーション関連の研究は予定通り進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
実験については,初期欠陥寸法を大きくすることで当初の狙いである,位相差を受ける二軸載荷条件下における疲労表面亀裂成長履歴を測定することが可能であることは今年度の経験により確認できたが,より確実にデータを取得するために,2016年度初頭に現在より板厚の薄い鋼板を新たに入手して試験片を作成することとしている. 数値シミュレーション関連については順調に研究が進捗しており,2016年度も計画通り研究を進める予定である.
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